内容説明
海も森も。過去の記憶も未来の約束も。すべては繋がっている。夏至を境に、水の記憶を持つ17歳の大洋と、膝に種を宿す明里の日常が動き始める。塩の樹の伝説をめぐる不思議な物語。中学生から大人まで。
著者等紹介
塚本はつ歌[ツカモトハツカ]
1983年生まれ。岐阜県瑞浪市出身。大阪芸術大学卒業後、職歴を重ねながら小説投稿を続ける。子育てをしながら執筆を行う(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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美紀ちゃん
76
木から塩がとれる。白く光るお姉さん。 自分のお母さんと同じ伝説を語る友達のお母さん。 倒れた大木。 水に入りたくなる自分の奇行。 ファンタジー要素強めのワクワクする話。 膝に種を持って生まれた友達。 通信手段は「木」。 海底の巨大な樹木。 胞衣を持って産まれたと自覚している義理の妹。 真琴ちゃん。 前世の記憶があるから大人なの? 不思議な力を持つ一族の末裔みたいな姉弟。 登場人物がみんな優しい。 大洋のこれからも楽しみ。 素敵な話だった。 2022/01/22
bura
63
献本プレゼント当選本。夏至の日を堺にして17歳の大洋に水の記憶が蘇る。そして樹に話しかけている同級生の明里の膝には「種」が宿っていた。更に大洋の姉、小巻とその母の人並み外れた美しさも、全ては塩の樹を守るためであった。水と樹と美しき者たち、それは海と森が繋がった壮大な世界のファンタジーだった。文章がビジュアライズされていて作者独特の感覚が楽しめる。アニメ化されたらより多くの人達に感動を与えられる一作だと思う。2022/01/07
Nyah
51
児童文学のくくり?なかなか壮大なロマンと、民俗学と伝承を感じさせる話です。/高校生の大洋は姉小巻と二人暮らし。両親が離婚し、父は海の近くの町に住み、母は山の町に二人を連れて住んだが、母は二人を置いて居なくなった。人魚の現身と言われる美しい姉は、地主の息子と近く結婚。夏至が近づくにつれ、大洋は意識を失っては水を浴びるようになった。姉弟で神木を見に行った際二人の前で巨樹が倒れた。不登校の明里の家で大洋は精霊の魂を持つ「境子」である事、明里の膝には樹木を目覚めさせる種がある事を聞く。「塩の樹」の伝承‥。2022/02/27
シフォン
45
伝説や神話に基づいた話なのですね。初めはなかなか理解が追いつかず苦戦しましたが、塩の木の伝説に縛られている人々の話であることがわかった辺りから面白くなった。リニアが地下を走ることになった地域で、御神木のイチョウが倒木した。森と海は繋がっている。物語を完全に理解することはできていないが、人間が暮らしやすいように開発することによる環境変化への警鐘、運命を背負って生まれたからといって犠牲にならず、他人と協力して乗り越えることの大切さを感じることができた。2022/01/08
b☆h
28
初読み作家さん。ある言い伝えが根付く、寂れた町での物語。言い伝えにはファンタジー要素もあって、その内容にはあまり心を動かされなかったけれど、ラストでは自然と涙が溢れてしまった…。作中には〝人が豊かって思えることと、自然が豊かに在るってことは、両立しないんだろうか〟とか〝悲しみはいつか癒える。癒えないのは痛みがもたらす記憶。〟とかの共感出来たり、考えさせられる言葉がたくさんあって、言い伝え要素がなくても十分楽しめたんじゃ?なんて感じてしまった。自分の在り方を見つめ、考えたくなる作品だった。次作に期待。2022/02/24