内容説明
宮沢賢治の壮大なコスモロジー初期の短歌から「銀河鉄道」「デクノボー」まで、西洋哲学者による異色の賢治研究書。
目次
予備的考察―崇高と「ディオニュソス」
賢治文学の出発点としての短歌
初期短篇―不条理の淵
法華主義への傾倒
賢治童話の世界
アニミストとしての宮沢賢治
宮沢賢治の詩の世界―修羅の嘆き
宮沢賢治のモダニズムと土着性
妹の死
北国への傷心旅行
「本当の百姓」と「農民芸術」
「銀河鉄道の夜」考
「デクノボー」への願い
阿修羅の墜落としてのデクノボー
著者等紹介
滝浦静雄[タキウラシズオ]
1960年岩手大学学芸学部講師。1968年東北大学文学部助教授。1971年同教授。1985年文学部長。1990年定年退官・名誉教授。岩手県立盛岡短期大学長。1997~2000年一関市博物館長。2011年6月没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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マウンテンゴリラ
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西洋哲学的な視点から宮沢賢治の作品と人生を論じたもので新鮮味を感じた。賢治が最晩年に残したとされる詩作「雨ニモマケズ」におけるデクノボーへのあこがれを、阿修羅のごとく追求した高みからの墜落であり、その寂寥感を崇高と感じさせることが賢治の作品や生涯における魅力となっているのかもしれない。このように考えると、本書は、仏教、特に法華経への信仰や理解のない読者に対しても、新たな視点での宮沢賢治の魅力を伝える評論であり、賢治が一般的に無宗教といわれる日本人に多くの人気を博している一つの理由としても理解できる。2013/01/11