内容説明
海のそばにある家。そこで彼は、日に日に弱っていく妻を一人看病し続けていた。横光利一の『春は馬車に乗って』が、書籍の装画やCDジャケットなどで知られるイラストレーターいとうあつきによって、鮮やかに現代リミックス。人気シリーズ「乙女の本棚」の第19弾が登場。小説としても画集としても楽しめる魅惑の1冊。
著者等紹介
横光利一[ヨコミツリイチ]
明治31年(1898年)福島県生まれ。早稲田大学政治経済学部除籍。菊池寛に師事し、『蝿』と『日輪』を同時期に発表してデビュー。「文学の神様」とも称された
いとうあつき[イトウアツキ]
イラストレーター。文教大学教育学部心理教育課程卒業。保育士として勤務後、イラストレーターに。ギャラリーDAZZLE実践レーターに。ギャラリーDAZZLE実践装画塾7期修了(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アキ
81
病に臥せる妻と献身的に看病する彼。妻の円く張った滑らかな身体は、竹のように痩せてきた。そして常に彼に文句と皮肉を欠かさない。妻のため看病すればするほど仕事もできず生活は苦しくなる。そんな難局に浮かんだイメージは、あてもなく青い羅紗の上を撞かれた球が飄々として転がっていく様であった。早春に知人からスイートピーの花束が届けられた。妻はその花束を抱きしめて恍惚として目を閉じた。妻と彼との間に交わされる会話に季節の描写がアクセントになる。いとうあつきの淡い色合いのイラストが物語を引き立てます。1926年初出。2021/05/23
美紀ちゃん
74
イラストが綺麗。 文章がキレイだからなのか。 美しい死の話。 肺の病気で寝ている妻を看病する夫とのやりとり。 妻は辛そうで、わがままを言うが、それを必死で受け止めようとする夫の献身。 病状が悪化してゆき、夫も辛い。 ダメになりそう。 冬を越せて良かった。 素敵な花咲く春まで生きていられて 良かった。花束を抱いて目を閉じたところが美しかった。2021/07/01
寂しがり屋の狼さん
69
【乙女の本棚】シリーズ22冊目📖『横光利一』さんは初読み。挿絵は『いとうあつき』さん。肺病を患った妻を看病する夫…二人の心境を柔らかな押絵で表現されて同シリーズの素晴らしさをあらためて感じた(◕ᴗ◕✿)2021/11/23
ちえ
47
多分ショックや悲しみを感じる余裕もない看病。夫婦間の諍い、宥め、諦め…。今まで読んだ『乙女の本棚』シリーズの中でも心に残る一冊。これは絵が素晴らしかった。特に赤を使った絵が印象的。読み終えて本を閉じ、表紙に目をやり初めて絵の意味に気がつく。考えながら見ると、どの絵もどこが残酷なのかもしれない。2021/10/31
優希
39
病が軸にありながらも、綺麗なイラストが暗さを軽減しているような気がします。2023/11/10