猫を拾いに

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  • サイズ B6判/ページ数 266p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784838726196
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0093

出版社内容情報

《恋をすると、誰でもちょっぴりずつ不幸になるよ。》――「クウネル」人気連載、待望の最新刊は、いろんな色の恋愛小説が21篇。個性豊かな登場人物たちが繰り広げる、楽しくてちょっと苦い傑作短篇ばかりだ。

川上マジックがいっぱいの最新短篇集はたとえばこんな話が21篇も収められている。
     
《好きになった時には、好きは永遠につづくはずだったのに、いつの間にか恋はさめ、ひとときも離れたくなかった男はただのかさばる存在になり、そのたびにわたしは率直に、前向きに、「別れよう」と宣言した。》――〈わたし〉の新しい旅立ちを描く「旅は、無料」。
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《日本の人口が減りはじめたのは五十年ほど前のことだ。それまでにもすでに少子高齢化が進み、生殖可能な人口の絶対数が減ってしまっていたので、減りかたは急激だった。》
――若い人が激減した近未来の日本を描くSF風味の「猫を拾いに」。
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《私の人生で、最大の悔恨。それは、息子がゲイになってしまった、ということなのである。》――川上ファンならおなじみの〈ゲイの修三くん〉の母が登場する「はにわ」。
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《結婚なんてさ、脳天がしびれる感じでばかになってなきゃ、できないことだよ。きちんと考え始めちゃったら、怖くてできないでしょ。》――優しくって顔も声もいい、清潔で趣味もいい。そんな言うことなしの恋人と別れた〈あたし〉の心の底を描いた「ホットココアにチョコレート」。
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《そのお店はとても不思議なお店なのだと桐谷さんは言う。お店に入れるのは、恋の悩みを持つ人間だけ。悩みをうちあけると、店主が必ず解決してくれる。》――日常とファンタジーが入り混じる「まっさおな部屋」。
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《マルイさんは、僕の両のてのひらをあわせた上に乗っかってしまうくらい小さいけれど、れっきとした人間である。》――少年と〈小さい人〉の交流を描く「ミンミン」。
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《たぬきのつがいと鶴が三羽、くだをまきながらビールを飲んでいる。キッチンでは地球外生物らしき浅葱色のぼやけた存在が、よごれものをていねいに洗っていた。》――わたしの誕生日のパーティにはいろんな人がやってきた。地球外生物も現われる「誕生日の夜」。
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《なにしろ、京都は怨霊のメッカだから、と新田義雄は言うのだ》――あたしの同僚の新田は霊能者らしい。信長の怨霊とふたりの絶叫がこだまする「信長、よーじや、阿闍梨餅」。
     
技巧をこらしたヴァラエティ豊かな傑作が21篇――贅沢で楽しい短篇小説集。


【著者紹介】
1958年生まれ。1996年「蛇を踏む」で芥川賞、1999年『神様』でBunkamuraドゥマゴ文学賞と紫式部文学賞、2000年『溺レる』で伊藤整文学賞と女流文学賞、2001年『センセイの鞄』で谷崎潤一郎賞、2007年『真鶴』で芸術選奨文部科学大臣賞を受賞。そのほかの作品に、『龍宮』『光ってみえるもの、あれは』『ニシノユキヒコの恋と冒険』『ざらざら』『風花』『パスタマシーンの幽霊』『どこから行っても遠い町』『天頂より少し下って』『神様2011』『七夜物語』『なめらかで熱くて甘苦しくて』などがある。


内容説明

恋をすると、誰でもちょっぴりずつ不幸になるよ。いろんな色の恋がある。小さな人や地球外生物、そして怨霊も現われる。心がふるえる21篇。傑作短篇小説集。

著者等紹介

川上弘美[カワカミヒロミ]
1958年生まれ。1996年「蛇を踏む」で芥川賞、1999年『神様』で紫式部文学賞とBunkamuraドゥマゴ文学賞、2000年『溺レる』で伊藤整文学賞と女流文学賞、2001年『センセイの鞄』で谷崎潤一郎賞、2007年『真鶴』で芸術選奨文部科学大臣賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ヴェネツィア

337
「クウネル」に連載されていた掌編小説21篇。本にまとまったのは、これで3冊目。隔月刊とはいえ、毎回決まった分量の作品を書き続けるのは、やはりたいへんだろうと思う。もっとも、そこはプロだから、毎回ちゃんと川上色を出しながら、しかも一定の水準に仕上げている。そうはいっても、うまく決まった回と、苦し紛れに捻り出したような回とがあるが、それもまた我々気楽な読者の楽しみのうちだ。「ぞうげ色で、つめたくて」、「はにわ」、「クリスマス・コンサート」あたりが著者にも会心の作だろうか。全体は川上風のとぼけた味わいだ。2014/11/01

優花 🍯モグモグ

120
「川上さんの作品は、なんか好き」ざっくりとした言葉になってしまいますが、私のなかで1番ピッタリと当てはまる感想です。とても微妙な心情、繊細な気持ち、複雑に絡み合ってそうで実は単純だったり。読んでいても心地が良い作品でした。2016/05/17

nico🐬波待ち中

111
雑誌『クウネル』に連載された21話からなる短編集。『朝顔のピアス』『ぞうげ色で、つめたくて』『クリスマス・コンサート』『旅は、無料』『ピーカン』『ホットココアにチョコレート』が特に良かった。男女間の秘かな想いに共感し胸がふるえた。これらは是非長編で読んでみたい。うそ話からリアルな恋愛ものまで多種多様な短編の詰まった玉手箱なような作品集。切なくなったりクスッと笑えたり。とてもお得な気分。この短編小説集シリーズの第一弾第二弾は以前から積みっぱなしになっているので読むのが楽しみになった。2018/05/24

Willie the Wildcat

93
時にふっと気づく、気づかされる心の拠り所。そんな印象が強いのが『真面目な2人』と『金色の道』。前者は白黒どちらか、あるいはどちらも捨て去るか。後者は”色”。両作品の共通項は、自分に向き合う!次に『九月の精霊』と『はにわ』。共通項は家族の温かみ。主人公が、心情を口にしないで心に想う点がその源泉。共感したのが『ラッキーカラーは黄』。USで生活して名前を意識した頃を思い出した。予想以上に喜怒哀楽に溢れた作品群で、静かな空間で楽しみたい一冊という読後感。なお蛇足ですが「ピーカン」ググりました・・・。(汗)2016/12/23

めしいらず

93
以前よりもシュールな話は減って、人との距離に意識的な人々の、営為や心象を切り取ったものが多い。予断を許さぬスリリングな展開や、突拍子もない登場人物、涙溢れる悲しい結末で読ませるものは一切ない。何気ないのに心掴まれる、神経の行き届いた最初の一行。何となく興をつなぐユルユルとした展開。読み終えてもおいそれとは次に進ませてくれない深い余韻。それらはカワカミさんの織り成す手練の文章の仕業。「はにわ」「ひでちゃんの話」「クリスマス・コンサート」「ピーカン」が好み。どの話も違うのに、不思議と読後感の粒が揃っている。2013/12/30

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