内容説明
一九七二年春、京都最大の学生街に風がわりな喫茶店が出現した。店には行列ができ、ミニスカ・ノーブラの女たち、長髪に髭モジャ男が働く。輪転機、旋盤が無造作に置かれた店の片隅で愛を、わいせつを、原発を語り、自作詩を朗読し、シンガーが新曲を披露する。―「ほんやら洞」とは何だったのか?二〇一五年の焼失まで、それぞれの時代に其処に通った六八人がそれぞれの「ほんやら洞」を追憶する。
目次
ジェローム・ブルベス
宮沢章夫 ほんやら洞まで五百キロ
神田稔 自作詩朗読会とほんやら洞について
荻野晃也 藤田一良・弁護士と私
依田高典 北沢恒彦が慕った森嶋先生、森嶋先生が愛した北沢恒彦
中川五郎 ほんやら洞回想
やんそる 出町と民基とほんやら洞
木戸衛一 失われたロベルト・ユンクの痕跡
鈴木隆之 「青春」の終わりかた
松隈洋 ほんやら洞との一期一会〔ほか〕
著者等紹介
甲斐扶佐義[カイフサヨシ]
1949年大分市生。十一歳で写真開始。1968年同志社大学政治学科入学、即除籍。1972年「ほんやら洞」開店に貢献。1977年写真集「京都出町」出版。1985年ヤポネシアン・カフェバー「八文字屋」開店。京都市経済局で商業診断の仕事にも従事。京都美術文化賞受賞、パリ・ボザール展ジャン・ラリヴィエール賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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りょうけん
6
<惜稿>執筆者の多くは物書きが生業ではない。2015年1月に焼失した京都今出川の喫茶「ほんやら洞」へ寄せた哀悼文集(店主甲斐扶佐義さんは存命)。我が知人の稿も掲載。2018年夏,木屋町「八文字屋」で購めた。どうやって最初ほんやら洞へ足を踏み入れたか,どんな経緯で甲斐さんと出会ったか,を殆どの人が書いている。僕が甲斐さんに出会ったのはたぶん2016年春頃。だから,ほんやら洞へは行ってない。でも八文字屋の雰囲気からして何となくどんなところだったか解るような気がする,などと書いては諸先輩方に叱られるのだろうか。2019/05/10
田中峰和
3
つげ義春の漫画「ほんやら洞のべんさん」に由来する喫茶店。いまから7年前に火災で焼失したことを知らず訪問しショックを受けた記憶がある。大学に近かったので学生時代に数回利用したが、ヒッピー崩れのような客が多く馴染みにくかった記憶がある。岡林信康から吉田拓郎まで顔を見せたほどの有名店だったが、焼失前は寂れていたようだ。放火という噂もあったが、本書執筆の甲斐氏が残した写真作品のネガや著書、43年分の日記などすべて焼失した。昭和の学生たちの貴重な思い出まで消し去られたようで寂しい。2022/12/03