内容説明
ことばは意味を持たない、それは意味と“なる”のである―真偽さえ不確かな大量高速のことばが飛び交う、言語危機のTAVnet(タブネット)時代に、“話す・聞く・書く・読む”という、日々の言語場を見据えつつ、鮮明に描き出される、ことば、文字、本の力が持つ希望。名著『言語存在論』『ハングルの誕生』の著者が、ことばの世界の根源から、歩むべき実践のありかたを照らす。
目次
第1章 ことばを最も深いところから考える―言語はいかに実現するか
第2章 ことばと意味の場を見据える―言語場の劇的な変容への“構え”を
第3章 世界の半分は言語でできている―ことばのパンデミック
第4章 ことばへの総戦略を―内から問う
第5章 ことばへの総戦略を―外から問う
終章 言語 この希望に満ちたもの―やはり、生きるための言語
著者等紹介
野間秀樹[ノマヒデキ]
言語学者。美術家。著書に『ハングルの誕生』(平凡社。アジア・太平洋賞大賞)など。大韓民国文化褒章。ハングル学会周時経学術賞。東京外国語大学大学院教授、ソウル大学校韓国文化研究所特別研究員、国際教養大学客員教授、明治学院大学客員教授・特命教授などを歴任。リュブリアナ国際版画ビエンナーレ、ブラッドフォード国際版画ビエンナーレ、ワルシャワ、プラハ、ソウル、大邱などでの美術展に出品、現代日本美術展佳作賞、東京や札幌で個展(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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タイコウチ
8
韓国・朝鮮語を専門とする言語学者による一般向け「言語存在論」。その要は「ことばは意味を持たない。それは意味と〈なる〉のである」ということ。〈話されたことば〉と〈書かれたことば〉がインターネットにより高速かつ多層的に溢れかえる現代をTAVnet(Text/Audio/Visual/internet)空間と名付け、そこでいかに生き抜くかを問う。と書くと仰々しいが、具体的でわかりやすい事例を交え、現代言語学の先を切り開こうとする根源的思索は刺激的で感動的ですらある。言語を生きるための〈構え〉をつくるための書。2022/10/11
Go Extreme
2
ことばを最も深いところから考える―言語はいかに実現するか: 言語はいかに在るのか ことばには〈かたち〉がある 言語の存在様式と表現様式を区別する ことばと意味の場を見据える―言語場の劇的な変容への〈構え〉を: 言語は言語場において実現 言語場は猛烈に変容 世界の半分は言語でできている―ことばのパンデミック :言語が私たちを抑圧する 言語のパンデミック、言語のメルトダウン ことばへの総戦略を―内から問う ことばへの総戦略を―外から問う 言語、この希望に満ちたもの――やはり、生きるための言語2021/07/27
Sin'iti Yamaguti
0
従来の構造主義的言語学を批判し、「言葉は人間がつくるもの」という認識のもとに、とりわけネットが発達した現代にあって、どう言葉と向き合い、受容し、発信するのかを縦横無尽に語る。言語学の世界は奥深く、難解なところもあるのだが、著者の人間性もあいまって(一、二度話させていただいた)、情熱的な語り口に引き込まれていく。 「言葉が存在をアクティベイトする」というのは、龍樹の「プラパンチャ」論を彷彿とさせる。2024/04/03
こたろう
0
ことばの影響力と言葉自体は意味を持っていないという著者の主張を具体例を多く入れて解説した本。著者の「言語存在論」を読んだ人が、具体的な例を知るのに読むと良いと思った。言葉として観測しづらい部分まで考慮に入れたことばの意味に対する主張のように感じたので、実証はどうやるのかは気になった。実験をやったとしても表現力・語彙力などによる個人差が大きく出るし、他者との研究比較も興味があるところ。歯切れが良い著者の思想は、好感が持てる。 また、図や人名だけの索引がある本を初めて読んだ。2021/09/13