内容説明
転換期日本外交の衝にあった第二次幣原外交の分析を通して、国益追求の政策と国際協調外交の関係を明らかに。「死活的利益」(vital interest)の視点で日本近代外交と幣原外交の新しいイメージを提示する。
目次
第1章 日本外交にとっての「死活的利益(vital interest)」―幣原外交を規定する縦軸と、これに対する横軸からの脅威
第2章 第二次幣原外交初期の日中交渉―一九二九年中ソ紛争の影響を中心に
第3章 対満行政機関統一問題と一九二九年中ソ紛争―満鉄による中国軍輸送を中心に
第4章 一九二九年中ソ紛争の「衝撃」―満洲事変直前期における日本陸軍のソ連軍認識
第5章 満洲事変における幣原外交の再検討―五大綱目を中心とした日本・中国・国際連盟の相関関係
第6章 一九三一年一二月国際連盟理事会決議の成立過程―錦州中立地帯設置問題との関係を中心に
第7章 満洲事変におけるハルビン進攻―北満政権工作との関係を中心に
著者等紹介
種稲秀司[タネイネシュウジ]
1974年兵庫県生まれ。2002年佛教大學通信教育部文学部卒業、2010年國學院大學大学院文学研究科博士課程後期修了。現在は國學院大學文学部兼任講師、広島大学文書館客員研究員。博士(歴史学)。専攻は日本外交史、東アジア国際関係史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Naoya Sugitani
3
第二次幣原外交に関する研究であり、完成度の高い一冊と言える。従来、英米協調、対中宥和外交で知られ、ともすれば「平和外交」とも評価されていた幣原外交の実像を、膨大な史料を元にしながら明らかにする。「死活的利益」というキーワードが日本外交に一貫した軸として存在し、幣原外交をその延長線上に位置づけ、さらに幣原外交の後期への連続性をも評価する。また、当時の分裂状態にあった中国や日中と列国、小国の論理の間で苦悩する国産連盟の内実も明らかにしている。今後の政治外交史研究の前提となるべき優れた研究である。2020/05/05
バルジ
2
第二次幣原外交を「死活的利益」の擁護増進という観点から再構成した名著。日本外交を貫く縦軸としての「死活的利益」に対し①中国②ソ連③ヨーロッパにおける国際協調路線と国際機構という3つの横軸の交錯によって、幣原外交からいかにしてアジアモンロー主義的な外交路線へと変化したのかを実証的に論じている。国際協調を自国の国益増進として捉えた日本外交は満州事変後にむしろ国益を損するものとして国際協調から離れアジアモンロー主義へと至るが、その土台は幣原外交から通底していたものであった。現代日本外交を考える際にも示唆に富む。2022/11/22
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