出版社内容情報
古くから東西交易の要衝として栄えた「レヴァント」。中世から近世への転換のなか、イスラーム国家とヨーロッパ商人の「共生」を支えてきた秩序の行方は? オスマン条約体制や海港都市アレクサンドリアのありようから、異文化接触の実像を明らかにするとともに、東アジアに及ぶ「治外法権」の淵源をも示した力作。
内容説明
イスラーム国家とヨーロッパ商人の共生か。古くからの東西交易の要衝「レヴァント」。中世から近世への転換のなか、それを支える秩序の行方は?オスマン条約体制や海港都市アレクサンドリアのありようから、異文化接触の実像を明らかにするとともに、東アジアに及ぶ「治外法権」の淵源をも示す。
目次
第1部 商業特権と条約体制の規範構造(マムルーク朝最末期エジプトにおけるヴェネツィア人の商業特権;オスマン帝国・ヴェネツィア間の条約規範の展開)
第2部 エジプトの支配体制と海港社会―アレクサンドリアの事例研究(マムルーク朝とエジプトのヴェネツィア人;オスマン帝国とエジプトのヴェネツィア人)
著者等紹介
堀井優[ホリイユタカ]
1965年神奈川県に生まれる。2002年東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。2003年地中海学会ヘレンド賞受賞。広島修道大学経済科学部准教授を経て、同志社大学文学部教授、博士(文学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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MUNEKAZ
13
15~16世紀におけるエジプトのイスラム勢力とヴェネツィア人の関係に迫った一冊。王朝の弱体化と対外危機によりスルタン・商人間に対立が生まれたマムルーク朝末期から、オスマン朝の覇権が確立し、安定した商業関係が築かれるまでをヴェネツィア人が結んだ「条約」から解説している。とくにオスマン朝の領土拡大に伴い対外関係の処理が、地方の総督による対応からイスタンブルの宮廷での審理に移行し、王朝権威の上昇が見て取れるのが興味深いところ。またユダヤ人の進出も著しく、オスマン朝の平和のもとで競争が激化したのも伺える。2022/02/03
人生ゴルディアス
6
よかった。アフドナーメは諸条約とも言うべきもので、オスマンが征服地において各種勢力との間に結んだ。中でも商業に関するものがかの有名なカピチュレーションのようだ。アフドナーメはオスマン帝国が拡大するのに合わせ締結されるものだから、ではその具体とは、ということで著者はマムルーク朝エジプト末期、特にアレクサンドリアのヴェネツィア人に着目し、マムルーク朝期とオスマン征服後との権利義務関係を明らかにすることで、どのようにアフドナーメが広がっていったかを明らかにする。2024/04/18