内容説明
大躍進政策や文化大革命によって大量の犠牲者を出しながら、現在なお大陸で英雄視される稀代の指導者。「秦の始皇帝+マルクス」とも言われる、その思想と行動を冷静かつ大胆に分析。中国経済研究をリードしてきた碩学が、現代中国の核心に迫る。
目次
第1章 毛沢東の哲学と思想―「矛盾論」と「実践論」の落とし穴
第2章 毛沢東と魯迅―もし魯迅が革命後も中国にいたら?
第3章 階級闘争論と大衆路線―毛沢東の「マルクス主義」
第4章 反右派闘争の展開と結末
第5章 大躍進と大飢餓
第6章 彭徳懐の悲劇―盧山会議とその結末
第7章 毛沢東の政治経済学―「矛盾の経済学」を解剖する
第8章 文化大革命と毛沢東
第9章 毛沢東と周恩来
第10章 毛沢東をめぐる女性たち
終章 毛沢東をどう評価すべきか
著者等紹介
中兼和津次[ナカガネカツジ]
1942年北海道に生まれる。1964年東京大学教養学部卒業。アジア経済研究所調査研究部研究員、一橋大学経済学部教授、東京大学大学院経済学研究科教授、青山学院大学国際政治経済学部教授等を経て、東京大学名誉教授(経済学博士)。主著『中国経済発展論』(有斐閣、1999年、アジア太平洋賞大賞・国際開発研究大来賞)、『中国経済論』(東京大学出版会、1992年、大平正芳記念賞)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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BLACK無糖好き
20
毛沢東の哲学と思想の分析から権力闘争や各政策の顛末、周囲の人たちとの関係、国家に与えた影響等多面的に論じる。毛は秦の始皇帝の権力とマルクスの権威を併せ持とうとしたというのが著者の見方。注目したのは毛沢東時代に確立された三つの統治原理、①権力主義、②エリート主義、③実用主義(鄧小平の実用主義は毛の実践論が元)が、現代の習近平まで継承されているとの指摘。これら原理が相互補完的に権力の維持・拡大の働きをしている。◇毛沢東に関する本はこれまでかなり出ているが、恐らくこれからも出続けるだろう。2021/11/19
無重力蜜柑
6
経済思想とか政治哲学、イデオロギー方面から掘り下げた毛沢東研究。既に膨大な研究の蓄積がある事実関係や党内抗争については軽く触れるにとどめ、毛沢東の内面について割と大上段に仮説を立てていくのが面白い。「ぶっちゃけ毛沢東の思想なんて権力闘争の道具としてその場その場で適当に考えたもんじゃないの?」と現代からすれば思いがちで、マルクス主義的にも特に見るものは無さそうという気もするが、それでも彼が共産主義革命家の巨人である以上、こういう風に思想を正面から捉えるのも意義はあると思う。2022/01/19
Omochice
0
毛沢東教/マルクス教毛沢東派という表現が出てくるが、現代の若者にとって政治と宗教が同一のように見えてしまっているのではないかと感じた。 そのため、政治の話をしない(信仰に関わるので)という流れがあるように思えた2022/02/07