内容説明
災厄の時代、美術は何を託されたのか。古今の時間を自在に行き来し、「像」と「アート」の汽水域にたゆたうシエナ派絵画。イタリア戦争と宗教改革にともなう波乱のなか、「聖母の都市」を守護する古きイコン=聖画像はいかに動員され、新たな使命を獲得したのか。繊細なシエナ美術に秘められたダイナミズムを析出し、イメージ論の新地平を切り拓く。
目次
第1部 時を乱すイコン―古画の再コンテクスト化と古様のモード化(石の中のイコン―聖画像のための大理石タベルナクルムの制作と受容;尼僧の手仕事?―「サンタ・マルタの修道女たち」再考;白衣の画家―ジョヴァンニ・ディ・ロレンツォとカモッリーアの戦い)
第2部 イコンとヴィジョンのあわいに―初期ベッカフーミによる三つのメタ・イメージ(聖母の子宮―“聖三位一体と聖者たち”;幻視の遠近法―“シエナの聖女カテリーナの聖痕拝受”;天のオクルス―《玉座の聖パウロ》)
第3部 母なるイコンを体内化する―「絵画タベルナクルム」考(帝国と自由―ソドマのスペイン人礼拝堂装飾にみる皇帝礼賛と聖母崇拝;闘争の表象/表象の闘争―ソドマによるロザリオ同信会のための二作品をめぐって;タブローの中のイメージ―対抗宗教改革期シエナにおける絵画タベルナクルムの展開)
第4部 上書きされるイコンの記憶―共和国滅亡後のシエナ絵画(都市と絵画の防衛機制―ジョルジョ・ディ・ジョヴァンニとシエナ戦争;亡国のパトス、喪のトポス―敗戦後のシエナ絵画における都市表象;Apparizione/appropriazione―メディチ家支配初期のシエナにおけるフィレンツェ絵画)
著者等紹介
松原知生[マツバラトモオ]
1971年岐阜市に生まれる。1994年京都大学文学部卒業。2002年京都大学大学院文学研究科博士後期課程研究指導認定退学。2006年第4回『美術史』論文賞(美術史学会)受賞。シエナ大学考古学・美術史学科客員研究員などを経て、西南学院大学国際文化学部教授、博士(人間・環境学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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