内容説明
城塞化した景観が映す社会の歴史。互いに武力闘争を繰り返す「闘う村落」―。それは王朝交替や辛亥革命などを経ても変わらぬ、明末以来の基層社会の姿であり、共産主義へと向かう農民運動の凄惨な暴力に極まる。宣教師文書を駆使しつつ、初めてその生成・展開・終焉を跡づけ、新たな中国史像を提示。
目次
第1部 華南農村社会の基本構造(村落と械闘;西洋の到来)
第2部 変革期(日清戦争と教会―高まる不安;義和団事件から辛亥革命へ―活性化する結社;青年と改革の時代)
第3部 武装闘争のゆくえ(国共合作から東征へ;海陸豊ソヴィエト政権)
著者等紹介
蒲豊彦[カバトヨヒコ]
1957年岐阜県に生まれる。1981年富山大学文理学部史学科卒業。1986年京都大学大学院文学研究科中国語・中国文学博士後期課程単位取得満期退学。現在、京都橘大学国際英語学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
BLACK無糖好き
15
本書の重要なキーワードは「械闘」(一定の大きさの集団間で武器を用いて行われる私闘)。村落間、宗族間のものが多く、主に中国華南地方で盛んだった。本書は広東東部の沿海部を中心に、地域の社会構造と社会変動の歴史を辿り、辛亥革命後の社会変革の運動と、地域の械闘的原構造の関わりを農民運動から検討した民衆史。キリスト教会と住民たちの関係も興味深いが、特に注目したのは、海陸豊ソヴィエト政権下で発生した大量虐殺とその残虐性。階級闘争、械闘、赤色テロ、白色テロ、全てが渾然となり復讐の嵐が吹き荒れる。もうついていけない。2021/07/10