内容説明
移民知識人とは何か。ブラジルへの貢献と移民の成功をともに導いた徳=内面的資質と、それを体現する人々としての日系人は、いかにして生みだされたのか。移民知識人がはたした決定的役割から、日系コロニア構築の100年を超える歴史をとらえ、デカセギや世代交代とともに失われゆくその姿をも映し出す。
目次
第1章 帰還、永住、再移住―日本帝国主義とブラジル日本移民知識層
第2章 移民的徳の誕生―戦後移住政策と政治的主体としてのブラジル日系人の形成
第3章 移民知識人の有機性―土曜会の知識実践と戦後移民社会の構造変容
第4章 拡散と凝集のプロジェクト―日系旅行社と邦字新聞社
第5章 徳、記憶、期待―政治的祭典としての移民百周年祭
第6章 ブラジル日本移民の政治、知識、徳
補遺 本書の民族誌調査について
著者等紹介
佐々木剛二[ササキコウジ]
1980年東京に生まれる。2013年東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。日本学術振興会特別研究員、慶應義塾大学特任講師などを経て、現在、慶應義塾大学SFC研究所上席所員、博士(学術)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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白石佳和
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「移民知識人」の実践に注目し、戦前から2010年前後にかけて、移民史編纂や邦字新聞などの記述を追い、ブラジル移民を分析した好著。土曜会などサンパウロ人文研につながる歴史など、いろいろ教えられた。私が研究している増田恆河という俳人もこの「移民知識人」の一人だったようだ。「徳」という捉え方もおもしろい。日系移民は勤勉さが国の中で評価され、それを誇りに思う日系人も多い。さらに、ニッケイアイデンティティという新しい考え方を広める動き(JICA)もある。そういう徳がどのように形成されたか、興味深かった。2022/08/10