内容説明
第一次大戦後、大正デモクラシー下の日本において模索された民間主体の国家総動員構想を、同時代の英米で展開された政策との驚くべき重なりとともに跡づける。ファシズムや軍部独裁をその必然的帰結とみなす通説を大きく書き換え、近代史理解の新たな地平を拓く。
目次
「国家総動員」競争の時代
第1部 戦間期アメリカ・イギリスの「国家総動員」準備(アメリカにおける「国家総動員」準備の展開;アメリカが見た日本の「国家総動員」準備;イギリスにおける「国家総動員」準備の展開;イギリスが見た日本の「国家総動員」準備)
第2部 日本の「国家総動員」準備(第一次世界大戦と「国家総動員」の発見;資源局の成立;資源局と国家総動員準備の展開;日中全面戦争と国家総動員法への道)
「国家総動員」とは何だったのか
著者等紹介
森靖夫[モリヤスオ]
1978年兵庫県に生まれる。2008年京都大学大学院法学研究科博士課程修了。現在、同志社大学法学部准教授、博士(法学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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BLACK無糖好き
21
テーマとしては豊富な先行研究がある中で、本書の特徴は大きく分けて次の二つ。一つ目は戦間期における国家総動員準備の実態についての日米英の比較。又、日本のそれを米英がどのよう見ていたかも明らかにしている。二つ目は日本の国家総動員体制の形成にシビリアン側がどのように臨んだかの分析。とりわけ内田嘉吉、大河内正敏、「資源局」創設の中心となった松井春生らに焦点を当て、文民主導の国家総動員体制の試みを詳らかにしている。◇ドイツの「国家総動員」のモデルも遡ればアメリカにあるとの指摘も重要なポイント。2021/02/05
hurosinki
2
日中戦争に至るまでの日本の国家総動員(産業動員)準備の主体は陸軍ではなく松井春生などのシビリアンであり、動員準備のモデルとなったのはドイツよりむしろ産業や国民の主体性を尊重したアメリカだった。著者の10本の既発表論文を一冊にまとめたもので、終章で議論を全部まとめてくれてるのでそこから読むのがいいかもしれない。2020/08/21