内容説明
三国志の英雄・関羽への民間信仰の広がりと、近世国家による統治の不可分の関係を示すとともに、帝国版図の拡大にはたしたその役割を、ユーラシア諸民族とのせめぎあいや現地の神々との習合も視野に描き出す。古代から今日にいたる関羽信仰の全貌を捉えた力作。
目次
序章 領域統合と民間信仰
第1章 唐朝から明朝における関羽の神格化
第2章 清朝と関聖帝君の「顕聖」―霊異伝説の創出
第3章 関帝廟という装置
第4章 「白蓮」の記憶―明清時代江南デルタの謡言と恐怖
第5章 清朝のユーラシア世界統合と関聖帝君―軍事行動における霊異伝説の創出
第6章 清朝の版図・王権と関羽信仰―乾隆帝の十全武功と関聖帝君の顕聖
終章 国家と宗教
著者等紹介
太田出[オオタイズル]
1965年愛知県に生まれる。1988年金沢大学文学部卒業。1999年大阪大学大学院文学研究科博士課程修了。広島大学大学院文学研究科准教授などを経て、京都大学大学院人間・環境学研究科教授、博士(文学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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電羊齋
7
関羽がさまざまな奇跡を起こす霊異伝説を収集し、分析を加えることで、清朝が関羽信仰を紐帯とする「われわれ」意識を利用した統合を図っていたことを明らかにする。清朝軍のあるところ関羽は出現し、奇跡を示す。関聖帝君の加護を受ける「われわれ」は「やつら」(外敵・反乱軍)に敗れることはない、と。こうした伝説が次々と創出され、宣伝されていく。大量の史料を博捜し、多くの伝説を収集し、その霊異伝説に込められた意図、役割を分析していく。良書。2019/12/29
沖縄電鉄社長
1
清朝が関羽、特にその「出現」をどう利用していったかを明らかにする一冊。個人的には関羽が最後にしか登場しない第4章におけるデマのパターン分析が興味深かった。2019/11/07