内容説明
真実と物語のあいだで揺れ動き、その意義を問われてきた歴史。ポストモダニズムの懐疑を乗り越えた後、いかにして「歴史の論理」を立て直すことができるのか。自らの実践に基づき、社会科学と文学の手法を和解させ、歴史記述を刷新するための挑戦の書。
目次
第1部 大いなる離別(歴史家、弁論家、作家;小説は歴史の父か;科学としての歴史と「文学という黴菌」 ほか)
第2部 歴史の論理(歴史とは何か;科学としての歴史を書く作家たち;真理陳述の作業 ほか)
第3部 文学と社会科学(ノンフィクションから真理としての文学へ;歴史は拘束された文学なのか;研究としてのテクスト ほか)
著者等紹介
ジャブロンカ,イヴァン[ジャブロンカ,イヴァン] [Jablonka,Ivan]
1973年生まれ。パリ第13大学教授。『私にはいなかった祖父母の歴史』(2012年。邦訳は田所光男訳、名古屋大学出版会、2017年)によつてアカデミー・フランセーズ・ギゾー賞、歴史書元老院賞、オーギュスタン・ティエリ賞を受賞。ほかの著作に『レティシア』(2016年、メディシス賞、ル・モンド文学賞受賞)などがある
真野倫平[マノリンペイ]
1965年、名古屋市に生まれる。パリ第8大学博士課程修了(文学博士)。南山大学外国語学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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田蛙澄
5
ホワイトを批判的に継承ということでこちらを先に読んだが、歴史家の研究方法をあらわにしつつ歴史を語ることで如何に歴史が構築されるかを透明化、民主化し、証拠に基づき仮説を立て推論し議論する歴史の論理によって、真実により説得的に読者を感動させる文学としての歴史や社会科学がありえるという著書の主張はとても興味深かった。しかし彼が(訳者もだが)批判する言語論的転回は少なくとも哲学的には言語とともに真実が構成されるということで単なる懐疑論ではないと思うのだが、そのあたりの理解が甘く感じた。2020/01/26
nranjen
2
図書館本。噂の本。歴史、社会学、文学との微妙で入り組んだ関係の展開を説明してくれている。ある時代のある見方の本しか読んでこなかった自分には開眼な感覚。それらの間に介在する微妙なニュアンスの影響が大きかったりする。彼が主張するこれからの歴史、文学はあくまでも彼が志向するものであると思う。ペレックがたくさん論じられていて嬉しい。2020/11/28