内容説明
カトリック拡大のため東方に渡った宣教師らが、巨大な清朝に見出したものは何か。中国古来の世界像や学術は、キリスト教の教義や勃興する科学と結びつくのか。共通言語から統治体制や歴史編纂まで、新たな帝国像を描き出した18世紀のアミオを軸に、「文明の翻訳」の実相を捉える力作。思想のグローバルヒストリー。
目次
在華イエズス会士と文明の翻訳
第1部 中国文明とカトリック・科学との接続(適応政策と中国研究の展開;典礼論争後における孔子像の創造;中国音楽における科学の発見;メスメリズムと陰陽理論の邂逅)
第2部 清朝という帝国と普遍(一八世紀在華イエズス会士と北京社会との接点―北堂を中心に;アミオがとらえた清朝の統治構造;「文芸共和国」の普遍語としての満洲語;清朝の統治空間をめぐる最新情報;『中国帝国普遍史概説』と清朝官修典籍)
アミオの中国像とその後
著者等紹介
新居洋子[ニイヨウコ]
1979年東京に生まれる。2002年国立音楽大学音楽学部卒業。2012年東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。東京大学東洋文化研究所国際学術交流室特任助教、国立民族学博物館共同研究員、桜美林大学・武蔵大学非常勤講師、博士(文学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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BLACK無糖好き
15
本書は、18世紀後半に在華イエズス会士が中国をめぐっていかなる翻訳活動を展開したのかを、フランス出身の在華イエズス会士アミオがヨーロッパへ送った広範な主題にわたる報告に焦点を当て分析している。アミオが著した『孔子伝』を元に、典礼論争後の在華イエズス会士における意識の変化についての論考、中国音楽における「科学」、皇帝における多元的統治という清朝の統治構造とヨーロッパの「公」をめぐる議論との関連など。更にアミオは、満州語を学ぶべき言語としてヨーロッパの知識人へ勧めようとしていた点も興味深い。2018/08/15