内容説明
差別なき社会の実現は可能か。植民期からオバマ大統領就任まで、「人種」問題を軸に米国史を一望し、積極的差別是正措置の現実と将来を描き出す。
目次
アファーマティヴ・アクションとは何か
第1部 歴史的前提(「社会的構築物としての人種」と近代世界システム;奴隷制が支えた初期アメリカの発展;奴隷制廃止から「ジム・クロウ」へ;差別隔離体制の動揺と法的平等の達成)
第2部 未来への試み(「貧困との戦争」から「優先枠設定」へ;二〇世紀後半の新移民流入と多様性の称揚;「逆差別」と「肌の色の無差別」による差別正当化;賠償請求運動と自立化促進)
「過去」の清算と未来社会への準備
著者等紹介
川島正樹[カワシママサキ]
1955年東京都に生まれる。1979年京都大学文学部史学科現代史専攻卒業。1988年立教大学大学院文学研究科史学専攻西洋史専修博士後期課程満期退学。千葉県立千葉高等学校教諭(1979‐90)、椙山女学園大学講師(1990‐92)、三重大学講師(1992‐93)・助教授(1993‐99)などを経て、南山大学外国語学部教授、同大学アメリカ研究センター長、博士(文学、京都大学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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たろーたん
1
黒人権利運動に影響を受けているケネディ政権を引き継いだジョンソン政権下で、より大胆な結果の平等を求める「偉大な社会」構想が打ち立てられた。この時、アファーマティヴアクションが実質的な平等化を目指す諸方策として開始された。それは今まで中産階級の白人が受けていた社会保障をより拡大し、黒人まで行き渡らせようとするもので、広範な社会構造改革を伴う社会保障・社会福祉・教育制度の改革の試みであった。しかし、貧困者の自立支援政策は難しく、結局は杜撰なバラマキになってしまう。(続)2023/11/12
Bevel
1
分離すれど平等を肯定する「ジム・クロウ」に対して、冷戦下の外圧とボトムアップでなんとかしたけど、これを変革のモデルとみるには失ったものが大きすぎるという感じ。「「性別/ジェンダー」と並んで明らかな統計的格差が見られる「人種」が、本人に責任のない「生まれながらの条件の差」と見なせない合理的理由を、筆者はどうしても見出せないのである」(192)「(…)「アメリカ的公正さ」とは、(…)建国以来「どの人も自己責任がとれるような能力と条件が保証された社会」を実現する努力で答えてきた歴史の中に見て取れる」(194)2022/07/22
Special77
0
アメリカにおける人種差別の歴史や、是正のの政策に関する歴史について書いている。ワシントンDCの黒人青年の4人に3人が刑務所等に入ったことがあるなどの実情を述べ、アファーマティブ・アクション(AA)の廃止よりも改善を訴える。黒人と白人の犯罪率の格差の原因が収入であり、黒人の多くは大学に行ける収入が無いことによるものだとする。しかし、そうなると、犯罪率の格差は人種ではなく収入によるものであり、黒人へのAAよりも人種にかかわりなく、低い収入の人でも学ぶことのできるような政策を行なうことが必要ではないかと考える。2015/08/14