内容説明
占領政策の一環としてハリウッド映画を利用したGHQと、その到来を歓迎して映画館へと押し寄せた日本人。両者の関係を多面的な交渉のプロセスと捉え、検閲・配給・宣伝をめぐる様々な試行錯誤から、ファン文化の形成まで、熱狂と葛藤に満ちた占領の文化史を描き出す。
目次
第1章 戦前の日本市場での挑戦
第2章 コーポラティズムの再生―ハリウッド・戦争・占領
第3章 闘争の空間―占領期の検閲と日本映画
第4章 ハリウッド対占領
第5章 文化の泉―ハリウッドの配給と宣伝について
第6章 文化の興行―映画館とアメリカ映画の上映について
第7章 文化人と「啓蒙」への渇望
第8章 『映画の友』とアメリカ映画ファン文化の形成
著者等紹介
北村洋[キタムラヒロシ]
1971年京都市に生まれる。1995年カールトン・カレッジで学士号(アメリカ学)取得。1997年ウィスコンシン大学大学院で修士号(歴史学)取得。2004年ウィスコンシン大学大学院で博士号(歴史学)取得。現在、ウィリアム・アンド・メアリー大学准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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swshght
7
「敗戦とハリウッド」。興味をそそるタイトルだ。本書は『帝国の銀幕』や『天皇と接吻』に連なる優れた研究成果といえる。だが北村は限定的な「映画」に終始しない。彼は文化研究の視座から映画を「文化装置」として複合的に捉える。それは権力や思惑が交錯する磁場だ。ハリウッドによる娯楽と健全さの提供。GHQによる民主化と啓蒙の推進。そして日本の抵抗と熱狂。ハリウッド映画はこの三つの相互的なポリティクスのなかで機能した。北村は当時の資料を綿密に調査し、日米映画合戦の様態を実証的に明らかにする。その膨大な情報量は圧巻の一言。2014/08/12
koji
5
著者には申し訳ありませんが、予想を裏切る「掘り出し物」です。出版社、装丁、著者から見て、無味乾燥の学術書を想像しました。題名と書評(朝日、日経)に惹かれて図書館に予約しました。私の琴線に触れたのは、米国が、第二次大戦後の占領政策の中で日本人の思想教育を行っていく過程をリアルに描いた点です。誇張もハッタリもなく、淡々と学術的に描くだけに、真に迫りました。ライス回顧録でも感じましたが、アメリカ式国家戦略は日本も(真似ではなく)学ぶべきものと思います。もう一つ、映画ファンも裏面史として読んでもらいたいですね。2015/02/24
ゆりいか
0
戦後日本にアメリカ映画がどのように受容、浸透していったかを詳細に著述した本。そのために戦前の映画市場も含めて記されており、包括的な理解ができたように思える。GHQをはじめ戦後の統治組織、検閲組織は日本映画だけでなく自国のアメリカ映画に対しても戦後日本に相応しいものを選別して公開していた事実など、興味深いことが多々書かれていて楽しめた。2017/01/18