内容説明
日本型の排外主義運動はいかにして発生し、なぜ在日コリアンを標的とするのか?「不満」や「不安」による説明を超えて、謎の多い実態に社会学からのアプローチで迫る。著者による在特会への直接調査と海外での膨大な極右・移民研究の蓄積をふまえ、知られざる全貌を鋭く捉えた画期的成果。
目次
序章 日本型排外主義をめぐる問い
第1章 誰がなぜ極右を支持するのか―支持者像と支持の論理
第2章 不満・不安で排外主義運動を説明できるのか
第3章 活動家の政治的社会化とイデオロギー形成
第4章 排外主義運動への誘引―なぜ「在日特権」フレームに共鳴するのか
第5章 インターネットと資源動員―なぜ在特会は動員に成功したのか
第6章 排外主義運動と政治―右派論壇の変容と排外主義運動との連続性をめぐって
第7章 国を滅ぼす参政権?―外国人参政権問題の安全保障化
第8章 東アジア地政学と日本型排外主義―なぜ在日コリアンが標的となるのか
著者等紹介
樋口直人[ヒグチナオト]
1969年生。1999年一橋大学大学院社会学研究科博士課程中退。現在、徳島大学総合科学部准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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奥澤啓
47
人間は生まれながらにして右翼でもなければ、左翼でもなければ、リベラルでもなければ、保守でもなければ、差別主義者でもなければ、排外主義者でもない。何らかの要因で何らかの立ち位置にいるにすぎない。在特会の活動を見ていると、そういうことを考える。どうして、特定の人間を排除、排斥したいのか。現在、日本の排外主義を社会学的に考察する学術書では、本書が必読文献らしい。一読だけでは深い理解には及ばない。日本はどんどん多民族化している。これからの社会はどうあるべきなのか?精読したい。学術書のため4536円と高い。2015/02/17
おさむ
35
在特会などに見られる日本型排外主義に関する学術分析。「ネットと愛国」が示した、疎外された非正規労働で経済的に不安定な男性たちばかりが主流、とは言い切れず、根っこには保守的イデオロギーがあるんですな。右派論壇すら使わない「在日特権」や「嫌韓」なるトンデモ言葉や概念が広がった背景にはネット、マンガやサブカル等の影響がある。外国人参政権の問題を対中関係と結びつけて安全保障化させる動きは完全なミスリード。にもかかわらず、大手マスコミも拡大再生産しているようで、読み手にもリテラシーが求められそうです。2016/09/09
mittsko
4
ザ・アカデミックな一冊 西欧の極右研究に範をとり、その知見と手法を現代日本に徹底的に適用する 綿密な、細かすぎるほどの文末注も 情念に流されがちなこの主題をめぐる議論に なんとか共有されるもの(本書でそれは、知性が解するもの、知性による仮説と検証が可能なもの、である)を示そうとする工夫でしょう 同時に、排外主義に対する著者の否定的なスタンスは明快です(ボクもそれに無条件に賛同します) 戦後日本の保守層(右翼団体とは異なる)それ自体が過激化していく様が とても説得的に、予断を排して描かれます 必読!2015/05/21
coolflat
4
在特会を初め排外主義運動参加者は、非正規労働者や鬱憤晴らしで構成されているという論が割と認知されているがそうではない。排外主義運動参加者は元々保守的イデオロギーの傾向を持ちネットを介し、自らのイデオロギーを増幅させる形で排外主義者となる。また日本型排外主義は右派論壇の言説の変化と密接に関係している。冷戦崩壊による安全保障政策の変化が、右派論壇の韓国・北朝鮮敵視の言説へと変化するが、日本型排外主義では在日コリアンと安全保障における韓国・北朝鮮を「反日」と同一視する事が、在日コリアンを排斥する根拠になっている2014/11/02
takao
3
ふむ2023/06/07