内容説明
最先端の経済学の成果にもとづき、日本経済の400年にわたる超長期の近代化過程を新たなヴィジョンで描き出す。米など近世期の財市場、江戸から明治にかけての金融市場、そして明治以降の労働市場へ、時間差をもって継起的に進化した市場経済化のプロセスを鮮やかに示す必読の著作。
目次
取引の統治と諸市場の逐次的な拡大
第1部 取引の統治と市場の形成(財市場と証券市場の共進化―近世期地方米市場と土地市場の動態;財政国家の成立―財政基盤の確立と公債市場の成立;株式市場の誕生と金融政策の成立―日本銀行と資本市場)
第2部 市場と企業(市場と生産の相互作用―横浜生糸市場と蚕糸業の再編;企業統治の成立―合理的な資本市場と紡績業の発展;企業組織内の資源配分―紡績企業における中間管理職)
第3部 内部労働市場の成立(労働市場と労働組織―筑豊炭鉱業における直接雇用の成立;内部労働市場の形成―筑豊炭鉱業における熟練形成;内部労働市場の深化と外部労働市場の変化―製鉄業における教育と経験と賃金 ほか)
著者等紹介
中林真幸[ナカバヤシマサキ]
東京大学社会科学研究所准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ゲオルギオ・ハーン
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とても長い期間を視野に入れて、日本経済が近代化していく流れを分析した一冊。江戸時代における米市場を取り上げて、米切手と幕府の政策で証券市場の形成と位置付ける。そして、明治維新後の株式市場の発達を取り上げる。また、他国の市場との関わりの広がりを生糸市場をケースにニューヨーク市場における日本の生糸の動きを見ている。最後に労働市場の変化を筑豊炭鉱と釜石製鐵をモデルに分析している。前半の米切手市場の分析は面白く、米切手市場の存在は地主たちの経営方針にも影響を与えていったことが示されていてとても面白かった。2021/06/08