内容説明
「虫が知らせる」「虫の居所が悪い」「疳の虫」といった表現の根底には、日本特有の「虫」観がある。かつての医学思想、文芸作品、民俗風習などを横断的に読み解き、「虫」の多面的な姿から日本の心身観を浮彫りにしたユニークな研究。
目次
第1部(言葉を発する「虫」―「応声虫」という奇病;「虫」の病と「異虫」;「諸虫」と「五臓思想」;「虫の居所」―「腹の虫」と「胸の虫」;「疳の虫」;「疳の虫」の民間治療)
第2部(「虫」病前史―「鬼」から「虫」へ;「虫」病の誕生;「虫」観・「虫」像の解体と近代化;教科書と近代文学に見る「五臓」用語と「脳・神経」表現)
著者等紹介
長谷川雅雄[ハセガワマサオ]
1977年名古屋市立大学大学院医学研究科博士課程修了。南山大学人文学部教授などを経て、南山大学名誉教授
辻本裕成[ツジモトヒロシゲ]
1992年京都大学大学院文学研究科博士後期課程中途退学。現在、南山大学人文学部教授
クネヒト,ペトロ[クネヒト,ペトロ][Knecht,Peter]
1978年東京大学大学院社会学研究科博士課程修了。南山大学人文学部教授などを経て、愛知学院大学非常勤講師
美濃部重克[ミノベシゲカツ]
1969年大阪大学大学院文学研究科博士後期課程中途退学。1986年南山大学人文学部教授(2010年逝去、同年名誉教授)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ポカホンタス
4
「腹の虫」についての文化史。膨大な古文書参照を武器として、いくつもの学問領域を横断しつつ、日本の心身観を照らし出す。応声虫、腹の虫と胸の虫、疳の虫、癪の虫などについての考察が展開され、五臓思想と関連づけられる。また、鬼から虫、脳・神経へと変化する医学パラダイムを描出する。たいへん読み応えがあり、自身の研究の参考にさせていただいた。2018/01/29
takao
1
むむ2017/11/10
むっち
1
昭和一桁生まれの母は、よく「疳の虫が出てるんや」と言っていたが、実際疳の虫とは何かを真剣に考えたことはなかった。この本は、異なるジャンルの専門家が、その専門を生かしながら共通の話題「腹の虫」の研究をした書物。正直、旧漢字も多く、読むのは骨が折れる。平安から江戸のまで民間に浸透していた「腹の虫」とか「疳の虫」が、もともと霊魂から形ある鬼、そして虫という具合にまじない祈祷から医師による治療へと転換出来た意識として有形の「虫」が想定されたこと、それは近代医学が、霊的なものから合理的思考に抜け出していく萌芽…つづ2012/07/29