内容説明
紙とは異なる木簡・竹簡の特性から、書記官のあり方、書体・書法や書芸術の誕生、そしてなによりも徹底した文書行政の実態を、文書の伝達・人の動き・物の管理にわたり、明晰な論理と緻密な考証によって蘇らせた労作。
目次
緒言
第1編 簡牘の形態と機能(簡牘の時代とその終焉;視覚簡牘の誕生;檄書攷)
第2編 書記とその周辺(書記官への道;書体・書法・書芸術;行政文書の書式・常套句)
第3編 漢代行政制度考証(漢代の地方行政;通行行政;食糧支給とその管理)
結論
著者等紹介
冨谷至[トミヤイタル]
1952年大阪府生まれ。京都大学文学部史学科東洋史専攻卒業、同大学院博士課程中退。京都大学人文科学研究所助手、大阪大学教養部講師、京都大学人文科学研究所助教授を経て、京都大学人文科学研究所教授。ケンブリッジ大学訪問研究員、ドイツミュンスター大学客員教授、中国西北大学客員教授を歴任。中国法制史、簡牘学。文学博士(京都大学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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3
2000年以上前の最先端情報通信技術であった木簡や竹簡を使っての行政のついて解説した本。「連絡を怠ったから処罰」とか各方面に連絡が行くなど役人に同情したくなると同時に、文書行政を機能させていた漢帝国と役人に敬意がわき上がってくる。2017/12/09
剛田剛
2
•文書行政が中央集権を可能にした。•漢帝国の文書行政はその後の王朝で再現されることはなかった。•文書によって中央の意志は地方の末端行政にまで伝達され、同時に文書によって地方の状況は中央に伝達された。このことは血流の比喩で捉えることができる。2023/07/14
ヴィクトリー
1
内容が深過ぎて、素人が読むにはいささかマニアックな本だったかもしれない。が、漢帝国が極めて厳密な文書行政を行なっていたことには驚かされた。文書の伝達に要する日数が決っていて、それに遅れると原因を挙げなければならないのは、現在の日本のお役所よりも厳しいのではないかと思わされる。こう言った厳密な行政は漢帝国以降では行なわれていなかったようだ、と結びにある。あまりにも完全過ぎて実行が困難だったようだ(また、後漢に発明された蔡倫紙により、4世紀頃以降は簡牘による冊書が使用されなくなったことにも依ると言う)。2010/10/03