出版社内容情報
「西洋古典」の代名詞とも言うべき,詩人ホメロスに帰される二大叙事詩の一つが満を持して登場.10年を掛けたトロイア戦争とその攻略後,さらに10年に及ぶ,狡知と忍耐に長けたギリシアの英雄による漂流・帰国譚.ロトパゴイ,一眼の巨人キュクロプス,魔女キルケ,妖怪セイレン,パイアケス人の王女ナウシカア等々,魅力あふれる登場人物たちは,今も創作家の想像力を刺激しつづける.
内容説明
二〇年の艱苦の末、ついに帰還を果たす英雄の冒険譚。
目次
第1歌
第2歌
第3歌
第4歌
第5歌
第6歌
第7歌
第8歌
第9歌
第10歌〔ほか〕
著者等紹介
中務哲郎[ナカツカサテツオ]
京都大学名誉教授。1947年大阪市生まれ。1975年京都大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学。京都産業大学助教授、京都大学教授を経て2010年退職(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
85
この本と「イリアス」は若い頃に読んだということとあらすじだけは忘れないのですが細かい内容はすっかり霧の彼方です。むかしはわからないなりにエネルギーで読んでしまったという気がしますが今回読んでみてこの本は非常に読みやすい気がしました。散文詩の様ではなくきちんとした文章で読んでいてすんなり頭に入ってきます。また注が後ろにまとめてあるのではなく同じページの下段にあるので途切れる感じもしないのでいいと思いました。2022/09/10
roughfractus02
11
神と人間が入り混じり世界を混乱に陥れたトロイア戦争後には、人間の歴史ではなく物語が生まれる。アリストテレス『詩学』が「はじめ-中間-終わり」の劇的構造を認めた本書は散文寄りに邦訳されてきた。本巻は原文の呪文のように反復する定型句的な繰り返しを邦訳し、吟遊詩人と聴衆との間に生じる声の時空を意味に対応する文字の時空に重ねて、読者の記憶の時空を多元化する。さらにポセイドンの怒りによるオデュッセウスの苦難とその狡知による帰還の物語は、詩人の舌を借りたムーサが語り、物語内で主人公が自らの物語を語ることで多層化する。2022/07/20
Vincent
9
13年ぶりの再読。松平訳(岩波文庫)と比べて簡潔で読みやすい。クライマックスの求婚者たちの成敗よりもオデュッセウスがアルキノオス王が催した宴席で語る数々の冒険談(全4歌にわたる)がロマンがあって抜群に良い。最高。2022/10/23
鏡裕之
4
高校生の時に、呉先生の翻訳を読んだ。あれから36年ぶり(?)に『オデュッセウス』を読破。1日で読み切った。表記のスタイルが散文ではなく韻文なので、視覚的にも読みやすい。注も豊富で写真つきの注もあり、これまた見やすい。インターフェース的にはとてもよいデザイン。注にはギリシア語表記もあるが、ちゃんと読み仮名を振ってくれている。ギリシア文字で表記する時って、ほとんどの場合読み仮名を振ってくれないので、とても親切。岩波文庫に比べれば高いけれど、高い分の親切さは味わえる。2022/07/24
Οὖτις
4
2700年程前の伝説を詩人が書いた。これを読む心躍る時間は古代を皮膚で感じる思いだった。読みやすいだけでなく、男言葉や女言葉、敬語のないギリシア語を変に大河ドラマ風に訳されていなくて気品がある。オデュッセイアは時代を経てSFにまでネタをされるほど想像力を掻き立てる物語だ。子供の頃から身近に聞かされていたら本当のことだと思い育ってしまいそう。その方が心には豊かで幸せなのかな。 さあ次は「ホメロス外典」を読もう。2022/07/24