出版社内容情報
清代末期から明治初年にかけての日中文化交流のなかで、とりわけ近代伝記の成立に注目し、中国の近代化の内実を明らかにする。
内容説明
東アジアの近代性の原点を伝記から探る。中国近代化において注目される梁啓超ら知識人の存在。清末および明治における文化交流のなかで近代伝記の成立過程を辿る。中国のナショナリズムの発端を啓蒙運動に見出すなど、近代性の原点を解明する。
目次
序章
第1章 東西交流で変容する伝記観―清末の雑誌と海外の人物略伝
第2章 西洋偉人伝の始まり―日本と中国のワシントン伝
第3章 中国の近代伝記と明治日本―吉田宇之助、早田玄洞、梁啓超の三つの『李鴻章』
第4章 歴史としての伝記―日清戦争戦記『中東戦紀本末』と梁啓超『李鴻章』
第5章 伝記の政治性―『殉難六烈士伝』と日本の「六士伝」
第6章 東アジアの歴史認識と志士伝―朝鮮の金玉均伝と日本
結語
著者等紹介
森岡優紀[モリオカユキ]
専門は中国文化研究、東アジア比較研究。神戸大学大学院文化学研究科単位取得退学。神戸大学博士(学術)。京都大学人間・環境学研究科単位取得退学。京都大学博士(人間・環境学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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崩紫サロメ
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近代歴史学に根ざした西洋的な伝記がどのように東アジアにおこり、展開していったのか。本書は梁啓超をその先駆者として論じる。「伝記」というジャンルに初めて着目し、自身も多くの伝記を執筆した梁啓超の活動については、従来日本からの影響を指摘することが多かったが、それが限定的であること、同時代の日本人に比べ、個人と時代の「関係性」に重点を置いていることを指摘する。つまり、一人物から中国の歴史を描こうとする試みである。第六章では朝鮮の金玉均の日記と伝記を通して、東アジアにおける伝記の需要を考察する。2022/04/28