出版社内容情報
ローマ共和政末期の内戦の時代を生きた人物が、政治活動の引退後に著わした史書2篇。ローマ衰退史観の元祖が摘出する国家の病とは。
内容説明
『カティリナ戦記』はキケロの演説によっても知られる国家転覆を狙った謀反の顛末を、『ユグルタ戦記』はヌミディア王位継承問題にローマが介入したため起こった戦争を語るもの。打ち続く内戦の時代を生き、当初は政治家として活動するも、引退後は行動でなく言論によって国家に貢献すべく、歴史執筆を志した著者を、帝政期の史家タキトゥスは「ローマの歴史の最も輝かしい作家」と呼んだ。
目次
カティリナ戦記
ユグルタ戦記
著者等紹介
小川正廣[オガワマサヒロ]
名古屋大学名誉教授。京都大学博士(文学)。1951年京都市生まれ。1979年京都大学大学院文学研究科博士課程中退。京都産業大学助教授、名古屋大学教授を経て2017年退職(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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roughfractus02
8
共和政から帝政に移行する紀元前1世紀にローマを揺るがした2つの史実が書かれ、古代ギリシアの歴史家トゥキュディデスに比肩しうると言われた。が、キケロが察知し、その陰謀を弾劾したカティリナのクーデタの顛末を記した本書を読むと、自らの経歴と類似したカティリナに対する思いを秘めつつ同時代を綴る姿が仄見える。帝政へシフトするカエサルが関与したとも噂されるこのクーデタ以後、言論の自由が規制された中での史実の記述は、ローマ貴族ヌミビスの腐敗政治に対する平民派の抵抗の背景に、ローマそのものの衰退と末路の予兆を織り込む。2022/07/07