出版社内容情報
苛酷な労働条件下に置かれた女工という従来の一面的な見方を離れ、実際の製糸女工たちの生の声に基づいて「女工哀史」を再構築する。
内容説明
「女工哀史」とは何であったのか。実際の製糸女工たちの「生きた声」に基づいて、苛酷な労働条件下に置かれた女工という従来の歴史観の是非を問う。
目次
第1部 日本の製糸業(戦前までの日本の製糸業の発展)
第2部 “糸ひき歌”の分析―製糸女工の失われた歌声を求めて(“糸ひき歌”とは何か;糸ひき歌と製糸工場へ働きに行くこと;糸ひき歌と製糸工場における労働の世界;糸ひき歌と製糸工場における生活世界;糸ひき歌と製糸女工の自己表象)
第3部 製糸女工の聞き取り調査の分析(ライフ・ヒストリーに即した製糸女工の“声”の分析;製糸工場に出るということ;製糸女工と工場労働の世界;工場生活(寄宿生活)の記憶
製糸女工と労働争議という抵抗形態
製糸女工の経験についての表象)
著者等紹介
シャール,サンドラ[シャール,サンドラ] [Schaal,Sandra]
ストラスブール大学(フランス)言語学部准教授(博士後期課程の研究指導資格取得)、京都大学大学院文学研究科特任教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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nranjen
5
図書館本。フランス人の方が書いた日本語論文。すごい。女工といえば小さな頃『ああ野麦峠』の映画を見て、恐ろしい〜><震えた記憶が。しかしこの本は弱者と搾取という二極化紋切化した過去の捉え方ではなく、当時を生きた女工の見方を再構成しようと、インタビューや様々な資料を用い検討している。その中でも「歌」が示すものの豊かさに度肝を抜かれた。世界恐慌をはさんで、時代のめまぐるしい変化に伴う変化や、農村の貧しさ(あまり触れられていない、売られていった娘たち)と比較すると、女工は「哀」と必ずしも言えるものではない。2021/02/11