出版社内容情報
本書はオスマン帝国(1300年頃~1922年)の支配下におかれた、バルカン半島、アナトリア、シリア北部地域に居住した遊牧民たちの「共生」の歴史を紹介する。近年、クルド人問題などで紙面を賑わわせているが、多民族・多宗教・多文化の諸民族はどのようにして互いに共存し、一つの帝国の中で生き抜いたのか。
オスマン朝が遺した膨大な行政文書史料を活用して包括的に研究する本書によって、近東の民族紛争問題が単なる宗教戦争ではなく、諸民族間に存在した相互関係に由来するものであることがわかる。
内容説明
オスマン帝国支配下にいた、遊牧民たちの共生の歴史。膨大な行政文書史料を活用した包括的な研究によって民族紛争の根を探る。
目次
オスマン朝と遊牧民
第1部 バルカン半島における奉公集団的「遊牧民」(ルメリのユリュクとタタール、そしてミュセッレム;征服者の子孫たち)
第2部 遊牧民の定住化(16世紀における遊牧民の定住化;シリア北部への遊牧民定住化政策)
オスマン朝にとって遊牧民とは何か、遊牧民にとってオスマン朝とは何であったのか
著者等紹介
岩本佳子[イワモトケイコ]
大阪府生まれ。京都大学文学部卒業。京都大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得満期退学、京都大学博士(文学)。現在は、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所ジュニア・フェロー。専門はオスマン朝史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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人生ゴルディアス
4
なんとなく本文のところどころが大仰で、さらに幕間のエッセイ部分の文体が非常にオタク臭い(なんか親近感があるな)と思ったら本当にオタクだったでござる。本文も註の偏執さ加減とか強烈に前のめりな感じがあって、いいね!と思った。写真類がすごく多くてそこも非常によかった。遊牧民の生活史みたいなのも手掛けてくれないかな。2019/08/11
Cebecibaşı
0
オスマン帝国の都市民研究、村落研究は数多く行われているが、遊牧民はたしかにあまり目が向けられていない分野であったことを気付かされた。体系的な史料群があまり存在しておらず、残っているものは非常に解読が困難な書体で書かれているものが多いというのも研究が進んでいない原因であると考えられるが、本書はその困難に正面から取り組んだ一冊であると言える。今後さらに都市との交易といった側面から、都市社会の側から遊牧民を捉えることもできるのではないかと思わされた。2019/12/28