内容説明
御所・離宮や公家屋敷と寺社の町京都には歴史的な名庭園が数多く残されており、庶民もまたウナギの寝床と形容される独特の家屋「町屋」に趣向を凝らした庭を工夫してきた。将軍や大名の庭から庶民の園芸までが花開いた江戸や町人の文化が隆盛した大阪とはひと味もふた味も違う、世界遺産の都ならではの庭園の魅力をあますところなく描き出す。上巻は皇室と公家・武家屋敷の庭園を紹介。
目次
第1章 植木屋と花屋と石屋(京都の植木屋;京都の花屋;京都の石屋;京都の植木屋・花屋・石屋の特徴)
第2章 天皇と公家の庭園1(内裏の庭園;仙洞御所の庭園;宮家・公家の庭園;御所内の庭園の変遷)
第3章 天皇と公家の庭園2(天皇の別荘の庭園;宮家の別荘の庭園;公家の別荘の庭園;別荘の庭園の役割)
第4章 武家の庭園(武家による京都支配;二条城の庭園;所司代と奉行所の庭園;大名屋敷と詩仙堂の庭園;武家にとっての庭園)
著者等紹介
飛田範夫[ヒダノリオ]
庭園史研究家。1947年東京に生まれる。1977年京都大学農学研究科博士課程中退。京都大学論文博士(農学)。受賞、日本造園学会賞。2003年度研究論文部門(『日本庭園の植栽史』)。2012年度技術部門(名勝楽山園整備事業)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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chang_ume
10
京都の公家・武家庭園について造園環境を含んで解説。北野・千本に集住した植木屋と別に、江戸中期までは造園を主とした「庭作」業が存在して、どうやら植木屋よりも社会的地位が高かった様子。また継続的に使用された内裏・院御所に比べて、宮家別荘は維持管理に苦労があったらしく、桂離宮は江戸中期以降は公家向け「貸座敷」と化した経緯が興味深い。武家庭園は所司代や町奉行所の付属庭園も詳しく、二条城などのいわば高級な庭園主体の従来解説とはまた別視点。生きられた空間としてどのような実態だったか、近世京都の庭園像がよくわかった。2021/09/05