内容説明
日本とは何か、私たちの未来とは何か。この、繰り返されてきた問いに、列島の生態環境と、その外にある諸文明からの力学の応答を見る立場から応える。東アジアに太古からあった自然・文化の多様性の結実として形成された日本の姿を自覚することで、我々は、現代世界の混迷を主体的に乗り越えることが出来る―高谷世界単位論の最終メッセージ。
目次
第1部 アジア概観―生態区と文明区(大陸の森;海の世界;草原、砂漠、中華世界)
第2部 日本の形成―内世界と外文明(列島の森と野と海―縄文文化の生態史;米と銅・鉄―弥生文化;国連合から王国へ―天孫思想の到来;日本国の確立―律令制の導入と在地化;中世武家の時代―分裂と進出;陸海あげての激動期―近世への胎動;近世日本国の成熟―江戸時代;脱亜から戦争へ―明治以降)
日本、「周辺」そして世界の共存
著者等紹介
高谷好一[タカヤヨシカズ]
京都大学名誉教授、滋賀県立大学名誉教授。1934(昭和9)年、滋賀県守山市に生まれる。1958年、京都大学理学部卒業。京都大学東南アジア研究センター助手、助教授を経て、1975年から京都大学東南アジア研究センター教授。1995年から2004年まで滋賀県立大学人間文化学部教授。2004年から聖泉大学教授。2016年3月11日、調査旅行中のインド・チャンディーガルで逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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田中峰和
6
日本史を世界単位論から見直す本書の構想は2005年から始められ昨年1月に完成し、著者はその2カ月後に逝去した。高谷の世界単位論とは、一国史観を排し、より広域のアジアの生態環境や交易・交流の歴史の中で、我が列島がいかに日本という形を成してきたのかを研究したものだ。この論考は80年代に発表されたが、称賛だけでなく批判も入り混じり広く議論されてきた。だが、現代文明を風土から理解するというアプローチは、我々が強く学ぶべき視点であり方法である。より巨視的な見方で捉えれば現代世界の混迷を乗り越えられるのではないか。2017/09/22