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出版社内容情報
本分冊には、当集成のなかでも最大量の述懐詩・事物描写詩や、比較的小規模な勧告詩、および飲酒詩・風刺詩などを収める。総じて類型化や修辞的な「あそび」の要素が目立ちはするものの、オルガンやビールから、公衆浴場・便所を詠った詞、果ては私設銀行の宣伝文まで、その種々雑多な内容は、かえって後期ギリシア人の心性や風俗習慣を垣間見せ、史的関心を喚起する。本邦初完訳。(全4冊)
沓掛 良彦[クツカケ ヨシヒコ]
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
roughfractus02
7
第8巻(邦訳第2巻所収)のギリシア教父ナジアンゾスのグレゴリオスが神的直観を留めるために書いたエピグラムを読んだ後に、本巻の膨大な述懐詩や事物描写詩に分け入ると、急に記述が気軽な調子に変わる。共同性を重視した古代ギリシアで、人が人と出会い葛藤する物語を体験する長大な悲劇の側で、ふと心に浮かんだ思いや目についた作品や事物が人々の口をついて出てきたようだ。人々の集う酒宴での失態があり、公衆浴場の賛美がある。が、相手を促し、広告で誘うような声が響く雑踏の中で、不意に、女は癪の種だと独りごつ心の声が耳の奥に届く。2022/07/10