出版社内容情報
植民地主義の負の遺産と新自由主義的近代化がもたらした凄惨な混乱から脱しつつあるアフリカ諸国。国家と法による断罪・懲罰(応報的正義)とは異なる,被害者の要求(真相の開示,経験の語り,謝罪賠償等)に注意を払い,犯罪によって歪められた人々の関係を正す「修復的正義」を本質とした,アフリカの「移行期正義」の内実に迫る。
【推薦】長有紀枝氏(立教大学社会学部教授・認定NPO法人難民を助ける会理事長)
アフリカの,特に紛争地に関わったことがある人なら誰でも抱くであろう相反する二つの感情がある。深い絶望と希望と。アフリカ研究の第一線に関わってきた執筆陣による本書には,その絶望を絶望に終わらせず,希望を単なるスローガンにしないための処方箋が詰まっている。抑止と対応と紛争後という3段階における知恵--アフリカの人々が培ってきた「潜在力」を知る必読の書である。
目次
紛争を抑止し和解を進める知恵を探る
第1部 アフリカにおける国家と紛争(冷戦後アフリカの紛争と紛争後―その概観;クラン小国家的主体形成の可能性と課題―北部ソマリアにおける国家と社会の交錯;紛争解決と和解への潜在力の諸相)
第2部 ローカルな紛争対応の可能性(フロンティアの潜在力―エチオピアにおける土地収奪へのローカルレンジの対応;制度と統治者の相克―コートジボワール内戦にみる紛争へのナショナルレベルの対応;紛争に対する国内的要因の重要性―ナイジェリアの二つの紛争から考える)
第3部 移行期正義の諸相―ローカルレベルから国際関係の次元(創造的な逸脱の許容―南アフリカ真実和解員会と移行期正義;「家族の会話」(Fambul Tok)プロジェクト―シエラレオネにおける新しい移行期正義
“和解をもたらす正義”ガチャチャの実験―ルワンダのジェノサイドと移行期正義
“ICCでの裁き”という選択―ケニアにおける選挙後暴力と移行期正義)
「アフリカの潜在力」という視角
著者等紹介
遠藤貢[エンドウミツギ]
東京大学大学院総合文化研究科・教授。東京大学大学院総合文化研究科修士課程修了、英国ヨーク大学大学院南部アフリカ研究センター博士課程修了、DPhil(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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