内容説明
近代にはじまるイノヴェーションの発展は現代でもなお持続しており、止む気配はない。一時ポスト・モダンという概念が提出された時期もあるが、これは近代の進展が一時減速したかに見える瞬間の、いわば上昇曲線のテラス部分の観察にすぎない。たしかにエコロジー問題の認識が、ポスト・モダンの思想を引き出し、イノヴェーションへの疑念が生じたことは疑いない。しかしそれは産業革命の引き起こしたエコロジー問題を功妙に避け、情報革命という新たな方向に道を見いだすことで、さらなる発展を遂げようとしている。一体その目指す目的はどこに、その意味は何にあるのか。本書は、近代的なイノヴェーション発祥の内的構造の解明に目を向けることから出発した。そしてできるだけさまざまなカテゴリーへのアプローチを通して、その構造が立体的に浮かび上がるように努力・工夫した。
目次
1 ヨーゼフ二世の劇場改革
2 モーツァルトの『魔笛』―啓蒙と神話
3 二つの世紀末における愛と性の社会学―ヴェーデキントとフリードリヒ・シュレーゲルにおける愛と性
4 ジョン・キーツの「喪の作業」としての詩
5 文学への洗礼―ドストエフスキーの場合
6 産業革命とロマン的イノヴェーション
7 「エレクトラ」から「バラの騎士」へ
8 世紀末的好奇心の布置―フェット・フォレーヌと時代精神