内容説明
16世紀後半、宗教戦争の荒波にもまれるフランスでは、文学が古典的ルネサンス様式をへて新たなバロック様式を獲得るに至った。本書は、アグリッパ・ドービニェ(バロック作家にして同時代史家、かつて改革派軍人)の強硬改革派信徒としての自己形成を、特にその詩的創作活動との関連で検討することによって、ともすれば近世初期の一挿話として見過ごされるきらいのあるフランス宗教戦争を立体的に描出しようと試みるものである。
目次
第1章 フランス16世紀、この特異な時代(フランス16世紀政治史―聖バルテルミーの虐殺まで;聖バルテルミーの虐殺;フランス16世紀―聖バルテルミー以後)
第2章 アグリッパ・ドービニェ、その数奇な生涯(青年期まで)(父と子;忘れられたひとびと)
第3章 『春』、この鬱屈した詩集(ディアーヌとドービニェ、ロンサール、百篇のソネ;『春』、その詩篇の特徴―変わらぬ心と定めない心)
第4章 『悲愴曲』までの道のり(『ジョデル追悼詩集』;『キルケーのバレー』;ネラックの宮廷、スタンス集、オード集)
第5章 『悲愴曲』とその異本文(『悲愴曲』の成立過程;『悲愴曲』の梗概;異本文と史実の反映;個人史から;晩年が告げるもの;他の著述から―政治論との対照)
著者等紹介
高橋薫[タカハシカオル]
中央大学法学部教授。1950年東京に生まれる。埼玉大学教養学部フランス文化コース卒業、東京教育大学大学院文学研究科修士課程(フランス文学専攻)修了。筑波大学大学院文芸。言語研究科博士課程(各国文学専攻)単位取得退学。駒澤大學外国語学部教授をへて、1996年より現職。専攻はフランス16世紀。訳書にリュシアン・フェーヴル『ラブレーの宗教―16世紀における不信仰の問題』(法政大学出版局。2003年日本翻訳家協会翻訳特別賞受賞)などがある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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