内容説明
従来、中世盛期フランスは中央集権化による王権の成長期として語られてきたが、地方では王権とは異なる様々な地域権力が活発に活動していた。本書は12‐13世紀の北フランス・ピカルディ地方に位置した一地域権力であるポンティウ伯領について、一次史料である『ポンティウ伯文書集』を用い、伯の側近構成・文書行政・財産と運営・裁判権・都市自治体との関係という5つの側面から考察する。この検討を通じて、ポンティウ伯が大領邦君主や王権のような領域的統治を志向していたことを明らかにする。
目次
序章 中世フランスの国家と社会―中規模領邦をめぐって
第1章 ポンティウ伯文書と文書局―伯の文書行政
第2章 ポンティウ伯の統治と側近たち
第3章 ポンティウ伯権力と所有―ポンティウ伯のdominium
第4章 ポンティウ伯の上級裁判権
第5章 ポンティウ伯とコミューン
結論
著者等紹介
大浜聖香子[オオハマミカコ]
1983年沖縄県沖縄市生まれ。2006年熊本大学文学部歴史学科卒業。2016年九州大学大学院人文科学府歴史空間論専攻博士後期課程単位修得後退学。2017年博士(文学)取得。現在、九州大学人文科学研究院西洋史講座助教(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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人生ゴルディアス
2
論文系の専門書だけど読みやすかった。伯の発行した文書の証人欄の変化である、幅広い親族→有力親族か古い貴族→中小の貴族、という流れから、仕事の専門化や伯の統治の範囲が広がっている様などがわかる。11~13世紀って文書仕事はみんな聖職者のイメージがあったので、案外聖職者が少なく2割程度。上級裁判権も伯の独占じゃないとか、そこだけ残して中級下級裁判権は贈与したりの話も興味深い。伯直系の認定コミューンもあれば、伯の封臣の部下の領主が認めたコミューンもあってそこの裁判権は伯のコミューンに負けるとかヤクザの枝と本家か2020/06/30