内容説明
国際情勢がますます緊迫化していく1938年11月、日本とナチ・ドイツは文化協定を締結し、両国は文化・学術面においても連携を強めたように見えた。しかしこの協定は「ユダヤ人問題」に象徴されるナチ人種主義に起因する両国の文化摩擦を顕在化させるものでもあった。協定の成立をめぐる政治過程と、敗戦に至るまでの両国の「文化協力」の実態を描く。
目次
序章 問題の所在と先行研究
第1章 日本外務省の文化協定政策―一九三〇年代後半における
第2章 日独文化協定の成立―一九三八年までの状況
第3章 外務省文化事業部の対独文化事業政策方針一九三八‐四〇年―日独文化協定の執行過程(1)
第4章 日独文化連絡協議会における学術交換をめぐる論議一九三九‐四二年―日独文化協定の執行過程(2)
第5章 「日独共同戦争」下の「精神的共同作戦」一九四三‐四四年―日独文化協定の執行過程(3)
終章 砂の上の同盟
著者等紹介
清水雅大[シミズマサヒロ]
1983年福岡県生まれ。2014年横浜市立大学大学院国際総合科学研究科博士後期課程修了、博士(学術)。現在、日本学術振興会特別研究員(PD)、九州大学大学院法学研究院専門研究員。専門、国際関係史、日独関係史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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BLACK無糖好き
18
戦時日独関係の内実を、日独間の文化的協力体制の構築と大戦の展開との連動について考察。日独文化協定の成立過程と執行過程に着目しながら、文化的な側面からも両国の「同盟関係」の限界点を炙り出している。「防共」や「世界新秩序建設」などのイデオロギーにおける共通性が見出されるものの、ユダヤ人問題等における人種主義イデオロギーと反人種主義プロパガンダという、相互に両立し得ない対立の図式は、日独文化事業の拡大を制限する要因ともなり、「友好」や「精神的連帯」などのスローガンも、矛盾点を解消するには至らなかった。2018/10/22