感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
32
静かな痛みとそれ故に大切で愛おしい日々への回顧。「白い鹿」は大人の合理的な考えと子供ならではの感性の対比が瑞々しいです。「モート」は少年の軽やかな関係と少女の気まぐれに振り回されるとほほ感が絶妙で唸ります。「コルドール」はラストで作品の印象が一変するのが鮮やか。「メイマ・ブハ」が梨木香歩さんの「からくりからくさ」のマーガレットの祖母の話と重なりました。2013/06/04
くさてる
8
深い味わいを持つ短篇が揃っています。人が生きるということは時に他愛なく、悲劇的で、ささやかなものに喜びを見出したり誤ってしまうことなんだろうなと感じました。「コルドール」の青年の感性と鬱屈は現代でも十分に通じるものだと思うし「恐怖時代の公安委員」と「最後の愛」で現れる切ない愛情の物語がとても印象的でした。2014/06/02
きりぱい
5
平易な文体でとても読みやすいながら、ナーバスな所を揺さぶってくる短編が八編。心に灯りかけた灯を消してしまいかねない様々な何か・・。『残響』というタイトルのままに、どれもが邂逅と喪失の余韻を残す。「コルドール」もよかったけれど、「傷ついた海鵜」が、え!ええっ!と呆然の短編。期待のハーディがそれほどでもなかったのは、他が印象的だったからかな。「白い鹿」が特に、「モート」「最後の愛」もなかなかよかった。2011/08/27