内容説明
中世盛期のフランスで、王権が都市を国王行政の代理人として積極的に利用していくようになる過程―いわゆる『良き都市』の萌芽期―について考察する。王権を唯一絶対の権力となってこそ完成するものとするのではなく、あくまでも社会全体の中で形成された錯綜する相互依存関係の中で捉えなおす。
目次
第1部 都市住民‐王権関係と都市をめぐる諸権力(ポワチエにおける王権のコミューヌ政策と都市内諸権力;13世紀ポワチエにおける王権・都市民・在地領主;都市‐王権関係と在地領主層;伯=王権の援助金要求とポワトゥー諸都市―13世紀ポワトゥー地方における『良き都市』をめぐって;ポワチエにおけるコミューヌ権力の拡大過程)
第2部 都市の経済活動と王権(ポワチエ流通税表の分析;大西洋ワイン商業の繁栄と都市;都市民の市場運営参加と伯=王権;ラ=ロシェルの都市内商業と伯=王権)
著者等紹介
大宅明美[オオヤアケミ]
1964年山口県生まれ。1987年広島大学文学部史学科西洋史学専攻卒業。1987~1993年広島大学大学院文学研究科博士課程、ポワチエ中世文明高等研究所DEA課程、日本学術振興会特別研究員(PD、九州大学経済学部)を経て1993年九州産業大学経済学部講師。現在、九州産業大学経済学部教授。博士(文学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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人生ゴルディアス
1
面白かった。旧イングランド領フランスの都市を中心に、コミューヌと王権、またそれらと対立する教会権力とブール、さらに在地貴族たちとの争いなどが丁寧に記されていた。と市民の自治組織らしいコミューヌ設立の特権を授けたのは、王が在地権力たちと戦うための抵抗拠点として都市民を手なずける必要があったからという軸がわかってからは、理解しやすくなった気がする。またそれ故に、一部の町によっては断固としてコミューヌが認められなかったり(都市民よりも教会権力と仲良くしたかった)等、興味深い。2021/01/27