出版社内容情報
中国からきた漢字を、情緒と繊細さをもって独自のものに変えてきた日本人。中国では漢字の音が重視されたが、日本では形や意味にもこだわった。歴史と共に変化する漢字の面白さを学べる一冊。
内容説明
日本人ほど漢字にこだわった人々はいない。中国から輸入した漢字を、いかに変化させ、独自の魅力あるものにしてきたか。
目次
第1章 変化し続ける漢字(漢字クイズからは学べないこと;エビという字の変遷 ほか)
第2章 中国での漢字の誕生と変遷(文学の誕生;甲骨文字の歴史 ほか)
第3章 日本の漢字の変化と多様性(日本語の多様性;日本語の歴史 ほか)
第4章 日本人による漢字への思い入れと手入れ(コノテーション;見立て ほか)
著者等紹介
笹原宏之[ササハラヒロユキ]
早稲田大学大学院教授。博士(文学)。東京生まれ。日本語と漢字について古代文字からギャル文字まで研究する。早大大学院を退学後、国立国語研究所主任研究官などを務めた。文部科学省の「常用漢字」、法務省の「人名用漢字」などの制定に携わり、NHK用語委員会の委員も務める。『国字の位相と展開』(同)により金田一京助博士記念賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ホークス
42
日本人と漢字の関係は深い。中国は音を重視し、インド語の「偉大な」=マハー(マハラジャやマハトマの)には「摩訶」、「与える」=ダーナ(ドナー)には「旦那」と当てた。日本は意味重視で微妙なニュアンスを使い分ける。たまごなら火の通る前は卵(卵かけご飯)で、通った後は玉子(玉子焼き)。中国は蛋、英語はeggのみ。多くの国は文化を「上書き保存」する。好きなら残す「別名保存」の日本は、漢字かな混じり文に行き着いた。著者は硬派な学者だが当て字も新字も大好き。漢字は禁断の果実であり、まだまだ発展中で発生中。2020/04/28
へくとぱすかる
37
昨日に続いて笹原先生の本を読む。こちらはより一般向けに書かれていて、昨日の本と重複するところもあるが、4年を隔てていて最新情報もある。韓国が2018年より教育上で漢字を復活させそうだというのは初耳。日本以上に同音異義語のトラブルがあるというのもわかる。せっかくの漢字ブームもクイズ番組で辞書的・表面的知識にとどまることは、私も確かに物足りないと思う。2017/10/15
或るエクレア
10
漢字と言っても今風な話題が多く読みやすい。特に後半は吹き出してしまうような話が多く、電車の中で読むのは危険である。日本人の漢字への思い入れは特殊で、意味や形にすごくこだわるんだとか。「桜」という字を見てもツの所が散っている花びらに見える詩人な人がいたり、第とか門とかの略字を書くと運気が下がってしまうと思う人など個性的だ。大人をわざわざ因囚と書く(□で囲まれていると可愛いらしい)女子高生や、卵と玉子を器用に使い分けるなど、漢字への愛着はとどまる所を知らない。たぶん1500年位ずっとこんなことしてるのだろう2017/01/08
magic makky
6
【感想】中国で漢字が現れたのは約3000年前。その当時の「魚」という漢字は、メソポタミアの楔形文字やエジプトのピエログラフに良く似ていて、未証明だが共通の由来らしい。中国で時代ごとに段々と形や書体を変えて、新しい漢字を上書きしながら進化してきた。一方、日本では中国から伝来した漢字を写本として受け継ぎながら、新たに平仮名や片仮名を生み出して共存させてきた。本書の表現を借りれば別名保存してきた。それは、日本人がひとつにあえてまとめずに多様性について寛容的であるという事例のひとつではないかと感じられた。2021/05/13
HMax
6
改めて、平仮名・片仮名を作り出した当時の人に感謝したいです。日本では漢字の持つ意味を重視し中国ではその音を重視するというのは、「へーっそうなんだ」でした。中国では「読んで字の如し」とは言わないのでしょうね。 最近の日本では、カタカナが氾濫して新しい漢字が生まれなくなっているものと思っていましたが、若者漢字もあるようで、100年後にも繋がる「平成字」が残って欲しいものです。三文字漢字は良くないそうなので、平成字よりも「新字」の方が良いか。ニュージーランドの略が「乳」であれば面白かったのに。2016/04/24