出版社内容情報
C・G・ユング著作財団[シージーユングチョサクザイダン]
著・文・その他
山中康裕[ヤマナカヤスヒロ]
翻訳
内容説明
分析心理学の創始者であり、二〇世紀を代表する思想家であるユングは執筆と同様に創作にも多くの情熱を注いできた。その視覚芸術の実践は生涯にわたり、デッサン、絵画、彫刻など幅広いジャンルで行われてきたが、ユング自身の「芸術家」を名乗りたくないという思いから知られることはなかった。しかし、二〇〇九年に出版された『赤の書』により、ユングの視覚芸術とその豊穣なイメージに注目が集まることとなった。本書では未発表の芸術作品も数多く紹介し、その変遷と芸術的意義を明らかにする。
目次
無意識からのイメージ―ユングの視覚芸術入門
C.G.ユングと現代芸術
現代芸術におけるユングの色の概念
画廊
自己の兆し―『赤の書』のためのユングのマンダラスケッチ
『赤の書』における素材と方法―抜粋報告
収集家ユング
『赤の書』における彩飾頭文字抜粋
カール・グスタフ・ユング―その生涯と業績
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ワッピー
35
図書館の新着棚で目が合いました。ユングはフロイトの同時代の心理学の大家であることぐらいしか知りませんでしたが、木の枝越しに光る曼荼羅のような球体のイメージの表紙が気になり、つい手に取りました。風景画や城、塔の遠景、曼荼羅、球体、ファネス、フィレモン、龍の絵、彫刻、屋敷の銘板に至るまで惹かれるものばかり。今回は図版のみを見るに留め、他の著作を読んでからあらためて解説・文章に戻ろうと思います。【赤の書】は翻訳があるものの、実際に手に取って読む勇気があるだろうか?この扉を開くのはちょっと躊躇しているところです。2022/12/11
roughfractus02
8
中国学者ヴィルヘルムの本に出会い、自分の描いてきた絵と東洋の曼荼羅との類似に気づくまで、西洋文化の中にいた著者は真に孤独だったという。アートを対象として捉える同時代の西洋でアートを生の技法とする東洋に出会う過程を念頭に本書を開くと、『タイプ論』で現実に反応する感覚とそうでない直観を対立的に捉えた著者自身のタイプ(直観型)が前面に出てくるのは確かだろう。自ら住むボーリンゲンの塔の石組みを生のアートとして自ら組んだ著者が、絵や彫刻を直観の表現とし、自らの意識と無意識の均衡を図ろうとし続けた軌跡として眺めたい。2024/02/15