内容説明
すべては1世紀半前、当代の名優が観劇中のリンカーンに向け放った銃弾から始まった。演劇的想像力が世を覆い、大統領暗殺は、アメリカのみならず、世界全体へのテロリズムとなるだろう。ブッシュ、オバマ政権以降、ますます鮮明になるアメリカの終わらない「物語」の構図を、克明に解き明かす。
目次
リンカーンの世紀
凡庸な大統領の肖像
南の夜の夢
アメリカン・モーゼ
あいまいな合衆国の私
マクベス夫人は今夜も
暗殺のドラマツルギー
ただ一発の弾丸が
鐘の音を聴け
一九〇一年究極の旅
“南北”の創成
モビイ・ディックの世紀
オバマ以後のリンカーン
著者等紹介
巽孝之[タツミタカユキ]
1955年東京生まれ。コーネル大学大学院博士課程修了(Ph.D.,1987)。現在、慶應義塾大学文学部教授。アメリカ文学専攻。代表的著書に、『サイバーパンク・アメリカ』(勁草書房、1988年度日米友好基金アメリカ研究図書賞)、『ニュー・アメリカニズム米文学思想史の物語学』(青土社、1995年度福沢賞)、『Full Metal Apache』(Duke Up/2010年度国際幻想芸術学会賞・学術部門賞)ほか。編訳書に、ダナ・ハラウェイ他『サイボーグ・フェミニズム』(トレヴィル/水声社、第2回日本翻訳大賞思想部門賞)ほか多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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がんぞ
5
自由州設定と逃亡奴隷引渡しを決めた1850年“大妥協”から黒人兵実戦争投入の朝鮮戦争までの百年を『リンカーンの世紀』と名付け、電報と鉄道の活用が連邦政府の鍵であったこと。南部同盟降伏後、リンカーンにどんな構想があったのか(黒人はアフリカに送り帰そうかと思案)、暗殺者ブース一味の思想背景(上演されていた『我等のアメリカの従兄』のクライマックスを狙って銃撃は行われ…)。そして日本に開国を迫る動機となった捕鯨の勃興と、代替エネルギー石油の台頭、産油国アメリカは海軍力でも日本を屈伏させ太平洋の覇者となった。2014/02/12
ゆめかまこと
1
史実に基づきながらも、そこに虚構である文学作品の解釈を関連付けて時代を読み解いていく見事な手際に感動すら覚えました。こうした仕事は歴史家ではなく、文学研究者でなければなしえないのだろうなと、しみじみ感じ入ったしだいです。2019/09/25
Nobody1
1
大統領とアメリカ文学がリンクするかくも見事な読み。2014/08/08
リール
0
1.52014/08/01