出版社内容情報
― 原子力発電所はなぜ地方にあるのか? ―
本書は原子力発電所および関連施設を抱える地域=原子力ムラを対象とし、「なぜそこに原発があるのか」 という問題意識から 「地方」 と 「日本の近代化」 の問題を分析するものである。
原発の是々非々論が大々的に(そして短絡的に)展開されるであろう今後にむしろ必要なことは、本書で展開するような根本的かつ歴史社会的な考察であり、原発そのものよりもその原発を有する地域=原子力ムラという現象に対する考察ではないか。
福島出身の著者が、フィールドワークを交えながら論じる、注目すべき一書。
“大文字” 言葉で書かれたものばかりの 「原発本」 の中で、福島生まれの
著者による本書は、郷土への愛という神が細部に宿っている。―― 佐野眞一
原子力ムラという鏡に映し出される戦後日本の成長神話と服従のメカニズム。
本書の刊行はひとつの奇跡だ。―― 姜尚中
原発は戦後成長のアイコンだった。フクシマを生み出した欲望には、
すべてのニッポンジンが共犯者として関わっている。
それを痛切に思い知らせてくれる新進気鋭の社会学者の登場!―― 上野千鶴子
【目次】
「フクシマ」 を語る前に
第Ⅰ部 前提
序章 原子力ムラを考える前提―― 戦後成長のエネルギーとは
1 はじめに
2 「翻弄される地方・地域の問題」 の複雑さ
3 『田舎と都会』
4 地方の服従と戦後成長という問い
第一章 原子力ムラに接近する方法
1 原子力ムラという対象
1・1 戦後成長とエネルギー
1・2 原子力ムラとは何か
1・3 原子力の三つの捉え方
2 これまで原子力はどう捉えられてきたか
マクロアプローチ
メゾアプローチ
ミクロアプローチ
葛藤から調和へ
3 どのように原子力を捉えるのか
第Ⅱ部 分析
第二章 原子力ムラの現在
1 原子力の反転
1・1 「クリーン」 な原子力
1・2 「脱原発の兆し」 と原子力ムラ
1・3 原子力ムラの秩序
2 原子力を 「抱擁」 するムラ
2・1 方法の再確認―― 「抑圧」 「変革」 からの脱却のための 「経験」 への注目
2・2 中央からの切り離し
2・3 流動労働者の存在と危険性の認識―― 原子力ムラが排除するもの
2・4 中央を再現するメディアとしての原子力―― 原子力ムラが包摂するもの
3 原子力ムラの政治・経済構造
3・1 反対の極から推進の極への 「転向」―― 二値コミュニケーションの転換
3・2 原子力ムラの経済依存―― 地元雇用と波及効果
4 佐藤栄佐久県政―― 保守本流であるがゆえの反原子力
4・1 「保守本流」 としてのスタート
4・2 「中央」 と 「原子力ムラ」 のはざまでの 「地方」 のゆらぎ
4・3 「中央」 との対峙
4・4 突然の幕切れと 「二つの原子力ムラ」―― なぜ 「地方」 は逆戻りしたのか
4・5 なぜ、佐藤栄佐久県政において原子力はゆらいだのか―― 電力自由化と五五年体制の崩壊
第三章 原子力ムラの前史―― 戦時~一九五〇年代半ば
1 戦時体制下のムラ
1・1 戦時下における貧しいムラの動員と変貌
1・2 中央の余剰の引き受けてとしてのムラ―― 起死回生のプロジェクトから
2 戦後改革と混乱するムラ―― 常磐炭田と大熊町
2・1 地方自治政策の変化とエネルギー政策の転換―― 常磐炭田のヤマ
2・2 戦後改革とムラの混乱―― 自律的であるがゆえの国家への取り込み
3 中央とのつながりの重要性
3・1 反中央・反官僚の戦い―― 佐藤善一郎の選挙
3・2 福島県と電力―― 中央‐地方関係の確立
3・3 主体性をもった地方の誕生―― 巨大電源開発プロジェクト
4 変貌するムラと原子力―― 原子力ムラ誕生への準備
4・1 中曽根康弘と正力松太郎―― 中央の政治・メディアにおける原子力と戦後復興
4・2 ムラの変貌―― 「村の女は眠れない」
第四章 原子力ムラの成立―― 一九五〇年代半ば~一九九〇年代半ば
1 反中央であるがゆえの原子力
1・1 「地方への」 から 「地方からの」 への転換―― 原発誘致のエージェント
1・2 原子力イメージの連続と断絶・原子力ムラの成立
2 原子力ムラの変貌と完成
2・1 原子力がムラにやってきた―― わらぶき屋根が瓦屋根へ
2・2 東電による雇用拡大と農業の変化・出稼ぎからの解放
2・3 ムラの変貌と成長の夢
2・4 中央から来る 「近代の先端」 に映る自画像
2・5 変貌の影の露呈
3 原子力ムラと 〈原子力ムラ〉―― メディアとしての原子力
第Ⅲ部 考察
第五章 戦後成長はいかに達成されたのか―― 服従のメカニズムの高度化
1 中央‐ムラ関係におけるメディエーター(媒介者)としての地方
2 ムラの変貌と欲望
3 戦後成長とエネルギー
4 内へのコロナイゼーション
第六章 戦後成長が必要としたもの―― 服従における排除と固定化
1 他者としての原子力ムラからの脱却
2 排除と固定化による隠蔽―― 常磐炭田における朝鮮人労働者の声から
3 成長のエネルギー
終章 結論―― 戦後成長のエネルギー
1 原子力ムラから見る服従の歴史
2 統治のメカニズムの高度化
3 成長に不可欠な支配の構図
4 幻想のメディア・原子力と戦後成長
補章 福島からフクシマへ
1 「忘却」 への抗い
2 「4・10」
3 忘却の彼方に眠る 「変わらぬもの」―― ポスト3・11を走る線分
注
参考文献
あとがき
関連年表
索引
内容説明
原発は戦後成長のアイコンだった。フクシマを生み出した欲望には、すべてのニッポンジンが共犯者として関わっている。それを痛切に思い知らせてくれる新進気鋭の社会学者の登場。
目次
第1部 前提(原子力ムラを考える前提―戦後成長のエネルギーとは;原子力ムラに接近する方法)
第2部 分析(原子力ムラの現在;原子力ムラの前史―戦時~一九五〇年代半ば;原子力ムラの成立―一九五〇年代半ば~一九九〇年代半ば)
第3部 考察(戦後成長はいかに達成されたのか―服従のメカニズムの高度化;戦後成長が必要としたもの―服従における排除と固定化)
結論―戦後成長のエネルギー
福島からフクシマへ
著者等紹介
開沼博[カイヌマヒロシ]
1984年福島県いわき市生まれ。2009年東京大学文学部卒。2011年東京大学大学院学際情報学府修士課程修了。現在、同博士課程在籍。専攻は社会学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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