内容説明
18世紀文学を支えたペイトロンの退場以後のロマン派文学における読書界を彩る人間模様や、イギリス近代出版の市場形成の過程を、具体的な文学現象を掘り起こしながら明らかにする。
目次
第1章 作者あるいは出版者の孤独と不安(出版者の問題;作者の問題)
第2章 新聞における「読者」―『モーニング・ポスト』を中心に
第3章 イングランドの出版者と読者が果たした役割―国民小説『奔放なアイルランド娘』の誕生をめぐって
第4章 読者と作家と出版者の共生―ジョアンナ・ベイリーの予約購読出版
著者等紹介
清水一嘉[シミズカズヨシ]
愛知大学文学部教授
小林英美[コバヤシヒデミ]
茨城大学教育学部准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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timeturner
5
読者層が大幅に拡大した18世紀後半イギリスの出版事情を4つの視点から考察した論考集。作家の為の著作権法が未確立な時代の悲惨。めげずに模索する女性作家達が頼もしい。当時の予約購読出版は今のクラウド・ファンディングだな。2019/02/24
志村真幸
0
2006年に鳥取大学で開かれたイギリス・ロマン派学会のシンポジウムをもとにした論文集。 18世紀末以降、詩や小説の世界がパトロン頼りから商業出版へ変化していったあたりをさまざまな側面から検討している。著者の得ていた金額がどのくらいだったのか、新聞上での詩の発表のもたらした効果、著者と出版者の交渉のディテール、予約購読制度の恩恵など、いずれも注目すべきことがらだ。 現代の出版事情へつながる諸相が浮き彫りになり、とても興味深い。ただ、4篇すべてがとは言わないが、整理や考察の甘い論文が目立つように感じた。2022/02/15