内容説明
動物だけでなく、脳も神経系もないゾウリムシ、大腸菌、植物、カビ・キノコも、あらゆる生物たちが独自の世界を感覚している。それは、どうやってできるのだろう。それぞれの生き物に、世界はどのようにうつっているのだろう。原初に誕生した生命から現在の多種多様な生物のすべてを生み出し、世界を認識するしくみを作ってきた進化の過程を探る科学の冒険。
目次
第1章 ゾウリムシに世界はどう見えるか
第2章 大腸菌に世界はどう見えるか
第3章 植物に世界はどう見えるか
第4章 カビ・キノコに世界はどう見えるか
第5章 ミミズに世界はどう見えるか
第6章 昆虫に世界はどう見えるか
第7章 魚に世界はどう見えるか
第8章 鳥に世界はどう見えるか
第9章 哺乳類に世界はどう見えるか
第10章 ヒト以外の生物にも意識が認められた
著者等紹介
実重重実[サネシゲシゲザネ]
1956年島根県出身。元・農林水産省農村振興局長。階層生物学研究ラボ研究員。10代のとき「フジツボの研究」で科学技術庁長官賞を受賞。1979年東京大学卒業後、農林水産省に入省。微生物から植物、水生動物、哺乳類など幅広く動植物に係わった。発生生物学者・団まりな氏に師事し、階層生物学研究ラボに参加。現職は全国山村振興連盟常務理事兼事務局長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やいっち
93
素晴らしい本だった。何が大事って、「意識に関するケンブリッジ宣言(The Cambridge Declaration on Consciousnes)」が2012年に出されていること。生きたタコを茹でるなんて、とんでもない!2020/01/19
アキ
87
めちゃ面白い。巻末に多くの出典が載る。著者は元農林水産省の行政官。故団まりな氏に師事し19年間階層生物学研究を学んだそうだ。ゾウリムシは10億年以上前にヒトと共通祖先があり、単眼をもつ。大腸菌は化学分子の匂いを見分けて鞭毛をモーターとして移動する。細菌の多くがそうであるため、38億年以上に最初の世界共通祖先LUCAは有機分子を見分けるための匂いの受容体を持っていたという仮説が刺激的。現時点で地球上にしか有機体から生まれた生物は存在せず、それは元をたどれば起源があるという当たり前のことをこの書は示してくれる2020/01/15
マリリン
46
ゾウリムシの意識や感覚が面白く愉しすぎて惹き込まれた。他の生物が持つ人間にない機能に驚く。侮れないな、全ての生物。大腸菌やカビ、植物、カビやキノコ、ミミズ…それらの多様性を知り意外な共通点を知り認識が変わった。「経路積算」機能は人間が本来持っていたものか。残っているなら機能向上させたい。「短期記憶」は欲しい。「電気魚」「掃除魚」等自然界における役割も興味深い。鳥の色別や聴覚は、薄々感じていたがなるほどと思う。タコは別格か。副題どおり階層進化に沿い話が進んでゆくのが解りやすくてよい。 2022/02/11
小太郎
35
これはタイトルに惹かれて読みました。一体人間以外の生物にはこの世界はどう見えるのだろう?と言うとても魅力的な内容です。まず視点がゾウリムシ、大腸菌、植物、カビ・キノコ、ミミズ、昆虫、魚、鳥、哺乳類、そして人以外の生物の意識と章が分かれていてどれもが驚くことばかり。全ての生物には共通の祖先があって「核酸を遺伝物質として使用」「アミノ酸からたんぱく質を作る過程は共通」「左巻きのアミノ酸しか使わない」なんて聞かされるとワクワクしてしまいます。視点が変わることは多様性の出発点なんだろうとつくづく実感しました。★42024/04/10
トムトム
29
最初から最後まで、とても興味深く面白かった!細菌だって何かを思うこともあるさ。昔、水槽の砂利掃除をしながら排水していた時、吸い込まれそうになった線虫がらせん状になり、水流を受け流してその場に留まっていました。「何これ!?」と思い排水を止めると、さっきまで流れがあったのと逆方向にダッシュ。「逃げちゃう!」と思い排水を再開したら、またらせん状になり水流を受け流す。そうこうしているうちに、水槽の水がなくなってしまい逃げられてしまいました。魚などの捕食者に吸い込まれそうな時、流れを受け流す技なのでしょうか??2020/10/25