出版社内容情報
戦後の日本と中国は、対立と友好の狭間で揺れ動きながら関係を形作ってきた。そのようななか、日本の文学は中国でどう翻訳されて、中国の人々にどう受容され、いかなる影響を与えてきたのだろうか。
1960年代から70年代までの井上靖『天平の甍』の翻訳と舞台化、70年代末から80年代末までの日本推理小説や映画のブーム、80年代末から2000年代にかけての村上春樹『ノルウェイの森』の翻訳と受容という3つのテーマに焦点を当てる。そして、国交正常化、文化大革命、社会主義の諸政策など、各時代の社会的な背景とともに人々の翻訳の受容の実態を浮き彫りにする。
日本文学の翻訳・舞台化・映画化を中国の政治・経済・法律などの諸制度とも絡めて考察して、原作-翻訳-受容のダイナミックな相互作用が中国社会に与えたインパクト、そして文学と社会の共振の諸相を描き出す。
内容説明
日本文学は戦後の中国でどう翻訳されて、人々にどのように受容されてきたのか。『天平の甍』や『ノルウェイの森』、推理小説などの翻訳・舞台化・映画化に光を当てて、現代中国の変容との関係を分析する。中国社会の底流にある日本文学の水脈をたどり、歴史を作り出す翻訳のダイナミズムに迫る。
目次
新たな翻訳研究に向けて
第1部 翻訳の歴史と歴史の“翻訳”(日中関係史のなかの『天平の甍』;運動としての演劇)
第2部 文芸・推理・法治(「推理小説」の点と線;「法治化」と日本映画ブーム;「法制文学」の誕生と変容)
第3部 世界はあなたたちのもの、またわたしたちのもの(『ノルウェイの森』と文学生産体制の転換;『ノルウェイの森』の翻訳と受容;「誤訳」のなかの真理)
“翻訳”による「脱階級化」と「再政治化」
著者等紹介
孫軍悦[ソングンエツ]
2010年、東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。博士(学術)。東京大学教養学部、人文社会系研究科・文学部教員を経て、立命館大学国際関係学部教員。専攻は比較文学、翻訳研究(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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