内容説明
ギリシャ神話から眠りの森の美女、吸血鬼ドラキュラ、バイオハザードまで、現代思想・文学・芸術の膨大な研究書・思索書を縦横に渉猟し、死と眠り、夢と覚醒が織りなす世界を実存的にとらえ返す「夢と眠りの百科全書」。
目次
序章 「眠り」とは何か?
第1章 眠りと不眠―不眠の存在学
第2章 夢と眠りの構造学
第3章 死と眠りのフォークロア
第4章 現代と夢の力
跋章 眠りの名人・奇人たち
著者等紹介
立木鷹志[タチキタカシ]
1947年、埼玉県生まれ。早稲田大学文学部中退(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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安南
50
このところ、ねむりについての小説を読んでいるので参考になるかと。伝説、神話から思想・文学・芸術を縦横無尽に紐解き、様々な側面から夢と眠りと死についてとらえ直した充実の内容。ページ数は少なめだが、得ることは多かった。特にレヴィナスの「眠りとは、不眠が現前させる《裸の事実》を祓うための《悪魔祓い》であり、自己をひとつの場所に委ねる、避難所を得ること」といった不眠の定義は興味深い。2015/05/13
佐倉
10
眠りと夢を文化的な事象という側面から論じていく、という試みをする一冊。大脳生理学など科学の論点では拾えない、社会にとっての眠り、個人にとっての眠りという観点は面白かった。現状の資本主義社会が眠りに価値を置いていないのは確か。本書でいうエジソンのようにショートスリープ最高!眠るのは無価値!という在り方からは流石に変わってきてはいるが、パフォーマンスのために睡眠が必要!という風潮も実用性に本位を置いている点でさほど変わり無いかもしれない。ドンレニ侯爵やアインシュタインのような個人的な付き合い方が好ましく思えた2023/08/31
デビっちん
5
再読。人間の眠りに正常なかたちなど存在しない。「眠り」とは一種の技術であり、自然なものではない文化的に作られた幻想である。眠るのが生理的自然だから眠れないのは不自然だという考えが前提にあり、眠りを自分の望み通りに得られるものと勘違いしたのが、現代の不眠症。眠りとは不眠の中断。不眠の中で眠っていることを忘れてはならない。睡眠に対する考え方が変わった。寝る時間を短くしようとしていたが、逆で、覚醒している時間を長くする。当たり前のように思えていて、因果関係を逆にすると、見えてくるものは何があるだろう?2015/04/12
デビっちん
4
再読。眠れば必ず夢を見ていて、眠りのなかでも夢のなかでも考え続けている。夢を意識して記憶したつもりでも目覚めると何も思い出せないことが大半だが、夢を記録するという訓練を通して、夢を記憶し思い出せるようになる。夢を夢と意識して夢を見ることもできる。夢を意識できるようになったとき、夢のなかで意識的に問題を解くこともできるようになる。普段ほとんど夢を見ないが、夢を見るための訓練をして明晰夢を見てみたい。そういえば、夢をテーマにした映画があったなぁ。2015/07/26
鳩羽
3
眠りとは「不眠の警戒」からの逃避であり、「現前する裸の現実」の回避であるとする。まあ、ぐっすり安らかに眠れるのが当たり前だとする信仰めいたものを解きほぐし、夢をみるとはどういうことなのかを哲学・心理学・民俗学的に考えていく。心理学的な分析ばかりじゃないところが目新しい。眠りが死のアナロジー出会った時代から、キリスト教や資本主義の影響からそうではなくなり、眠りの違いが死生観の違いとなっていくところが面白かった。2013/03/02