内容説明
旧友の仕官を助ける「人情武士道」、馴染まぬ新妻の愛の成就をはかる「山椿」、肩寄せ合う人たちのためにかけ試合をする「雨あがる」、婢や使用人にも慕われた妻の日常をはじめて知る「松の花」、死去した夫人の願いをわが事として仕えた下女の「二十三年」など、武家とその妻女たちの人情ものがたり九篇を収録。本書オリジナル編集。
著者等紹介
山本周五郎[ヤマモトシュウゴロウ]
1903・6・22‐1967・2・17。本名:清水三十六(しみずさとむ)。山梨県生まれ。小学校卒業後、質店の東京木挽町の山本周五郎商店に徒弟として住み込む(筆名はこれに由来する)。雑誌記者などを経て1926年「須磨寺付近」で文壇に登場。庶民の立場から武士の苦衷や市井人の哀感を描いた時代小説、歴史小説などを発表。1943年、『日本婦道記』が上半期の直木賞に推されたが受賞を固辞。『樅の木は残った』『赤ひげ診療譚』『青べか物語』など、とくに晩年多くの傑作を発表し、高く評価された(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ひさか
19
2022年4月本の泉社刊。9篇を収録。現実にはあり得ないような情の話のことを戸石泰一さんが巻末の解説でメルヘンと表記しているが、なるほどと思ってしまった。女性が中心となる話も多く、山椿、松の花、墨丸なんかは確かにメルヘンかも。続きで、雨あがるの続編である雪の上の霜を青空文庫で読んだがこれもメルヘンだった。2023/08/01
JADE
18
「市井篇」が良かったのでこちらも。武家とその妻女たちの人情ものがたり9篇。言葉少なに妻を思い遣る夫。あくまでも控え目に夫を慕う妻。物静かな語り口の中に、男女の、夫婦の深い情愛にしんみりとさせられた。「雨あがる」「橋の下」「墨丸」がお気に入り。暑すぎて外に出るのがいやになる休日。言葉を1つずつ丹念に拾いながら、じっくりと読み味わうのにとても良い1冊だった。山本さんの小説、やっぱりいいなと思った。誤字がちょっと気になったけど、読みやすい体裁で山本さんの名作を再び世に出してくれた「本の泉社」に感謝。 ☆42022/08/11
のほほん
11
「人情ものがたり」そのものの短編が9編です。「雨あがる」は強すぎて謙虚すぎて、相手がしらけてしまう伊兵衛さんのお話です。伊兵衛さんはちょっとまんがチックなキャラクターで楽しくてとってもいい人です。「裏の木戸は開いている」はだまされても、だまされても、相手の再生を信じてつくす喜兵衛さんのお話です。心やさしい喜兵衛さんはその日の糧にも困るような人々のためにもできることはないかと考え実行します。9編に登場するような殿方ばかりなら、平和で住みよい国になっただろうにと思われます。心がほっと温かくなるお話たちでした。2024/04/17
きゅんちゃんのいもうと
5
いつ読んでも山本周五郎さんいい。 裏の木戸はあいている は読むたびに違う思いがみつかる。2023/04/28
GO-FEET
4
〈本の泉社〉という出版社が編んだ山本周五郎アンソロジー。 「人情武士道」 「山椿」 「雨あがる」 「四日のあやめ」 「橋の下」 「裏の木戸は開いている」 「松の花」 「墨丸」 「二十三年」 と、どれも読み応えあり。 ついでに〈青空文庫〉にて「雨あがる」の続篇ともいうべき「雪の上の霜」も読む。 で、残念ながらこういう出版物にありがちなのだが、誤字脱字が酷い……2022/07/29