内容説明
牛を追い、馬を愛し、女教師との恋に生き、盗賊を縛り首にするヴァージニア貴族の末裔で超美男のカウボーイ。だが、宿敵トランパスとの対立は深まり、ついに昼下がりの決闘へ…。ウェスタン小説の金字塔、本邦初の全訳。
著者等紹介
ウィスター,オーエン[ウィスター,オーエン][Wister,Owen]
1860‐1938。アメリカの西部小説家。フィラデルフィアの名家の出身。ハーヴァード大学卒。The Virginian(1902)はハードカバーだけでも200万部近くを売り上げ、アメリカ合衆国の出版史上に残る大ベストセラーとなる。1914年以後、数度にわたって映画化され、連続テレビドラマにもなっている
平石貴樹[ヒライシタカキ]
1948年生まれ。東京大学文学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
まふ
113
厚さ4センチの「大著」を幸せな満足感とともに読み切った。けれん味なくのびのびした正統派西部劇を味わった心地よさを感じる。ワイオミングに東部ヴァーモント州から学校教師として赴任した名門家系の娘モリーが武骨なヴァージニア出身の西部の男「ヴァージニアン」に心を奪われてついに結婚するに至るまでの楽しい出来事がスムーズな筆致で描かれる。カウボーイたちは素朴だが気のいい連中だ。一方で、牛泥棒のトランパスとの一対一の決闘シーンもあり、懐かしい西部劇の映画を観ているようでカタルシスも十分に味わえた。G1000。2024/01/22
NAO
51
20世紀初頭、アメリカ西部の未開地を馬で自在に駆け巡るカウボーイたち。荒くれ者たちの中にあって、南部出身のヴァージニアンはイギリス系のどことなく貴族的な雰囲気のある美丈夫で、様々な事件が起こる中、臨機応変さと誠実さで仲間たちをまとめあげていく、まさにアメリカのカウボーイの中のカウボーイだ。揉め事や無法者には強いけれど、美女にはめっぽう弱い。恋あり、冒険ありと、素直に楽しめる、ウエスタン小説でのジャンルを確立しハリウッドにも多大な影響を与えたという作品。ここから数多くの西部劇が作られたと思うと、感慨深い。2016/03/19
星落秋風五丈原
31
【ガーディアン必読1000冊】 これまで西部劇というジャンルがなかった小説界に初登場したのが本作と解説にある。 そういわれれば、なるほどなぁと思う所が何か所もある。 まず初登場シーン。判事に会うため、列車でワイオミング州メディシン・ボウにやってきた僕は、誰がやっても縄をかけられなかった子馬に、ある男があっさりと縄をかけたのを目撃した。うっとりしている間もなく僕は、荷物が紛失したのを知らされる。西部の洗礼を受けたわけだ。てのウェスタン小説。2022/02/18
ヘラジカ
22
解説によるとどうやらこの小説が西部劇の原型らしい。拡大解釈すれば、つまりヴァージニアンは、全アメリカンヒーロー(現在ハリウッドで縦横無尽に活躍するアメコミヒーロー含めて)の始祖ということになるだろう。広大な西部、その自然の中を駆ける馬、美女との大恋愛、そして勿論最後は男同士の決闘。勇猛果敢かつ繊細な心を持つ紳士が、あらゆる困難を才覚と度胸で乗り切るという、アメリカンスピリットを体現した究極のウエスタン。正に至高の一冊である。本質的に西部劇が嫌いな男などいないのだ、これは断言しても良い。2016/02/23
maja
20
ウェスタン小説・映画はこの一作から始まったと言われるアメリカ古典大衆小説「ヴァージニアン」をようやく読めた。ずっしりと重たい本だ。列車の窓越しに現れる投げ縄を手にする「彼」の登場のシーン、東部からやってきた青年の目に映る南部訛りの西部の男。青年のささやかな駆け引きからうかがえる「彼」で始まる本作。面白かった。ロマンスあり、道を違えた友情の顛末あり、決闘あり、時代の変化の兆しありなど西部劇のさまざまなシーンの雰囲気も思い浮かんで物語に溶け込んでくるような。訳者あとがきをとても興味深く読んだ。2023/01/08