出版社内容情報
江戸時代―旅人から旅人へと連れられ江戸からこんぴらさん(讃岐)までお参りした犬がいた!? 見ず知らずの人同士が身分にかかわりなく善意をつなぎ、願いをたくされた犬をこんぴらさんまで届けた驚くべき風習を、犬目線の旅物語として描いています。
内容説明
飼い主・弥生の病気が治るようお祈りするため、ムツキは、江戸から讃岐の金毘羅さんまでお参りに出された。京都までは、知り合いのご隠居さんといっしょに旅ができるはずだったが…。ムツキの、往復340里(約1340km)にもおよぶ旅路と、道中での出会いや別れをえがく。「こんぴら狗」というかつて実在した風習をもとにした、江戸時代の歴史物語。
著者等紹介
今井恭子[イマイキョウコ]
広島県生まれ。上智大学大学院修士課程修了。第12回小川未明文学賞大賞などを受賞。日本児童文学者協会会員
いぬんこ[イヌンコ]
大阪府生まれ。京都嵯峨美術短期大学卒業。挿絵師として、雑誌、書籍、広告等、様々な媒体で活躍している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
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ぶち
91
犬が一匹で、江戸から讃岐の金毘羅様にお参りに!江戸時代、伊勢参りや金毘羅参りは庶民の憧れ。でも自分はなかなか旅には出られないから、代わりに飼っている犬にお参りに行ってもらう、現代では考えられない"こんぴら狗"。主人公は雑種犬のムツキ。ムツキはお詣りを果たし、そして、苦労しながらも江戸に戻ってくるのです。帰り道の途中で、盲目の少年宗郎とその母、お供の者と出合います。彼らが弥生の家までムツキを送り届けてくれたのですが、彼らもムツキと行動することで成長し、ムツキは彼らと供に行くことでまた成長していくのです。2019/04/28
chimako
81
表紙のこんぴら狗「ムツキ」の表情が良い。飼い主弥生の病治癒祈願に江戸は日本橋からこんぴら参りに出たムツキのロードムービー。現代のように新幹線や飛行機で一っ飛びというわけには行かず長い長い道のりをひたすら歩き続けたムツキ。その場所場所でいろんな人の親切を受け、可愛がられ食べ物をもらい一緒に休み船に乗る。江戸時代の「こんぴら狗」は特別な存在だったというのが分かる。誰もが蔑ろにせず行きも帰りも世話をやく。気持ちに余裕があった。楽しい一冊だが少々長い。エピソードを整理して200ページ位だと読みやすいなぁ。2022/05/31
NAO
81
【戌年に犬の本】参拝できない主人の代わりに金毘羅さんへ代参する「こんぴら狗」は、実在したという。日本中の誰もが、一生に一度はお伊勢さんや金毘羅さんに詣でたいものだと願っていた。だからこそ、犬に代参させるということがどれほどの願いであるかが、誰にでも、容易に理解できたのだろう。そして、そんな風に主人の代参をする犬を、尊いものに思ったのだろう。かつて、日本人の身近に神がいて、仏がいた。彼らの暮らしは、常に信心に溢れていた。その思いの深さに、心が洗われる思いがした。今年の小学校高学年課題図書。2018/09/08
紫 綺
53
飼い主・弥生の病が治るよう祈願するため、犬のムツキは江戸から讃岐金毘羅詣での旅に出る。出会いや別れを描く。実在した「こんぴら狗」の歴史的風習を基に創られた感動の物語。ムツキの気持ちがリアルっぽくて好きだな。2023/11/25
☆よいこ
44
飼い主弥生の病治癒の祈願のために、江戸から金比羅参りをすることになったムツキ。【こんぴら狗】としてご隠居と江戸をたつがご隠居は道中病死してしまう。その後様々な人の手を借りながら金毘羅まで辿りつき、御札を得て江戸に帰る。▽人の都合で犬が振り回されて大変そうだ。しかし、出会った人々は、ムツキを見て癒されたり慰められたり心を揺らす。人の祈りを運んでくれるものがいる、その存在が嬉かったのかもしれない。ぬいぐるみやらロボットやらを人づてに旅させるって企画が昔あったなぁ。2018/06/17