内容説明
独ソ戦や、スターリン体制による市民への大規模な抑圧は、ロシアの人びとの記憶に何を遺したのか―。体制転換後の新生ロシアにおけるソ連時代の歴史認識論争の実像を、歴史教育や歴史教科書をめぐる論争から明らかにする。
目次
第1章 体制転換と自国史像
第2章 ペレストロイカと自国史像
第3章 ソ連の解体とロシア連邦の出発
第4章 ロシアのアイデンティティとは何か―歴史教育の改革と自国史をめぐる論争
第5章 プーチン政権と歴史教科書
第6章 「大統領委員会」創設への反発
第7章 犠牲者の記憶と向き合う―国家プログラムの作成とロシア歴史協会の創設
第8章 抑圧をいかに記憶すべきか―犠牲者の記憶の永続化政策と自国史教育
終章 和解のために
著者等紹介
立石洋子[タテイシヨウコ]
成蹊大学法学部助教。香川大学法学部卒業後、東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了。博士(法学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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BLACK無糖好き
20
ソ連末期からソ連解体後のロシアにおけるスターリン時代の評価の推移。国民の統合のために歴史解釈を統一しようとすると逆に分裂が深まる恐れがあり、複数の歴史解釈が国民の統合を妨げるジレンマ。スターリン期の抑圧や戦争による被害者の数も膨大なだけに、社会の分裂をいかにおさえながら「統合」と「和解」を目指すのか。複数の歴史教科書や多くの歴史解釈の中から、一定の共通理解を持たせるための試みは長く険しい旅路のようだ。もがきながらも国民的アイデンティティを模索し続けるロシアの姿が鮮やかに描き出されている。2020/12/24
Toska
5
スターリン時代を自国史として消化するという難問に取り組んだロシアの苦闘を描く。被害者と加害者が入り組んでいて峻別できず、国は潰れたが日独のように外部から強制的に裁かれる機会もなかったため、この問題は超ド級の難関であった。ほぼ年代順に描写されており、ペレストロイカ以降の現代ロシア史が追体験できる。エリツィン時代の圧倒的などうしようもなさ。日独では戦後の民主化と経済発展が並行して生じたのに対し、ロシアの場合は民主化=経済と社会の崩壊であったから、過去を克服する上で余計にややこしい要素を抱え込んだのではないか。2021/11/06
隠者
1
スターリン時代の歴史的評価に対してどう推移していったかを克明に書かれている。そして非常に何回でありよくわからん人名が頻繁に出てくる。イニシャルに略すのはいいとしてもロシア語のままなのはどうなの?と思わなくもないけど英語でもわからないから気にしてはいけない。スターリン時代について、自分で情報収集してどういったものでそれがどうよくてどう悪いのか自分の意見をきちんとまとめさせるということをさせている辺り日本の教育の問題点をよく表してるし外国に負けるのもさもありなん。2021/04/09