出版社内容情報
イギリスの対独宥和は、いかなる理由で追求されたのか?
第一次世界大戦が終結しても反目を続けるフランスとドイツを前に、
ヴェルサイユ条約の修正を選んだ1920年代後半のイギリス外交を
政策決定者の対外認識から再検討し、従来の「宥和=失敗」説を問い直す試み。
内容説明
ドイツへの譲歩は失策だったのか?敗戦国との協調なくして戦後に国際秩序なし―。1920年代後半のヨーロッパに永続的な安定をもたらすべく、ヴェルサイユ条約の修正を図ったイギリス外交の構想と論理を探る。
目次
序論 第一次世界大戦後のヨーロッパとイギリス外交
第1章 イギリスの対独「宥和」成立の背景
第2章 連合国ラインラント占領をめぐるイギリス外交、一九二四‐一九二七年
第3章 ヴェルサイユ条約対独軍縮をめぐるイギリス外交、一九二四‐一九二七年
第4章 ラインラント非武装化をめぐるイギリス外交と占領終結への道、一九二八‐一九三〇年
結論 対独「宥和」の意義と限界
著者等紹介
藤山一樹[フジヤマカズキ]
日本学術振興会特別研究員。1986年生まれ、慶應義塾大学大学院法学研究科後期博士課程修了、博士(法学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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BLACK無糖好き
19
ヴェルサイユ条約におけるドイツの占領・軍縮・非武装化をめぐる、1920年代後半の英国の政策決定と対外交渉過程を再構成することで、当時の英国外交当局者に共有される(対独宥和への)「オフィシャル・マインド」を抽出させている。著者が述べるヨーロッパの安定的な国際秩序再編へ向けた英国の姿勢は一定程度評価できるものの、フランス政府公刊史料へはオンラインで数件アクセスしただけのようで、フランス側の見方に対する考察が不足している印象。フランス側の対独認識と相対化を図り、英国の特徴を際立たせてもよかったのではと思った。2020/04/13
バルジ
2
戦間期のイギリス外交を「対独融和」という視点で描き出した好著。30年代後半のナチス台頭を知る現代人にとっては「融和」政策は悪しき前例でしか無いが、それらの後知恵を排し、当時の政策決定者の思考を分析することで実りある内容となっている。ラインライント駐留問題を中心に対独恐怖心強いフランス、一方敗戦国として制限された主権を取り戻すべく陰に陽に抵抗するドイツ、この仏独和解と安定的なヨーロッパ国際秩序を構築するにはどうするのか、その場合選択されたのが「対独融和」であった。(続く)2019/06/30
ワッキー提督
0
20年代後半の英仏独関係における、イギリス側の論理が実証的に詳述されている。2019/04/21